科学から生まれた画期的な木製床ガラリ『Airtool』

科学から生まれた画期的な木製床ガラリ『Airtool』

ルームエアコンの気流を利用した、輻射熱床暖房が工務店を中心にちょっとした話題となっています。この床暖房は、床下に集めた暖かい空気の上昇気流を利用しますが、ここで空気の軌道を作るのに欠かせないのが床に取り付けるガラリです。

表面スリットを細かくして安全を確保しつつ上昇気流の発生も妨げない形と技術を持ち合わせた、エクレアパーツの床ガラリ『Airtool(エアトオル)』について、詳しく解説していきます。

室内の不快感を生む原因はコールドドラフト!

ずいぶん前から、住宅の屋根に取付けた集熱パネルで獲得した太陽熱の空気を床下へ集めて暖房を行う太陽光集熱型暖房システムが設計事務所や工務店から支持されていました。

最近はそれに代わって高効率のルームエアコンの気流を床下に吹き出し、床下全体を暖めて輻射熱床暖房に利用する方法が、工務店を中心にちょっとした話題になっています。

床ガラリを取り付ける適切な場所は?

床下に集めた空気は、暖かく湿気が少ない軽い空気なので上昇気流として高いところに上がろうとする性質があります。そこで床にガラリを取付けて空気の軌道をつくり、床輻射熱と共に暖気流も利用して部屋を暖める方が効率がいいとされています。では、床のどの場所に床ガラリを取付けるのが良いのでしょうか。

正解は窓回りです。特に掃き出し窓などの大きな開口部の床に設置することが多いようです。

熱伝導が高い大きなガラスや金属は、外気温が下がるにつれ、表面が冷たくなり、室内に下降気流を発生させます。これをコールドドラフトと言います。冬に大きなガラスに背を向けて着座していると背中が寒さでゾクゾクする経験があると思いますが、まさにその下降冷気がコールドドラフトです。

窓回りの床にガラリを取付けるのは、暖められた上昇気流を利用し、コールドドラフトの不快感を抑制するためなのです。

踏み抜き、小さな子ども指挟み…木製ならではの安全面での注意点も!

窓回りに取付けられる床ガラリには金属、樹脂、木などその素材にも種類がありますが、木製フローリングに馴染み、高級感があるのはやはり木製ですね。

前述しましたが、床ガラリはコールドドラフト対策のために必須アイテムですが、大きな開口部や掃き出し窓は、外部とつながる部位でもあるため、動線になる場合が多く、踏み抜きについても配慮しなければなりません。

踏み抜きを防ぐためには、まず木材の断面を大きくしたいところです。さらにもうひとつ素足で家中を走り回る小さなお子様の足指が挟まらないように表面スリットを5㎜以下にする必要があります。

しかし、このように断面を大きくして、スリットを細くしてしまうと、気流が通り難くなってしまい、上昇気流が室内へ上がってこないのです。

安全面も気流の通りもベルマウス方式で解決

この難問を一挙に解決したのが、ベルマウス方式です。

断面を細かい加工技術によってテーパー(先細り)加工することで、スリットの広がった裏面に空気が滞留し、上昇気流が発生することを発見しました。一定の強度と気流の二兎を追うことを可能にしたことで特許技術として登録しています。

この画期的な木製床ガラリはekreaパーツからAirtool(エアトオル)という商品名で販売しています。

安全で気流が通るAirtool

そもそも科学(Science)とは、発見を目標にするもの、技術(Technology)とは、発明に近いもの、工学(Engineering)とは、損得を勘案・判断基準にして最適化を図っていくことです。産学協働で東京理科大の研究室からベルマウスという考え方をアドバイスいただき、工学的に当社で最適化を図ったのがこの製品です。

まさに汗と煙の結晶!Airtool開発秘話

気流の実験を依頼できる研究機関は全国にいくつかありますが、本格的にモックアップを作って実測するとなると結構な費用が発生してしまいます。だったら自前で出来ないかと、現在は軽井沢事務所の責任者を務めるSくんに相談したところ、やってみましょうということになりました。

まずこのような実験に必要な小道具と言えば、撮影に必要な暗室は勿論のこと、レーザー光線、撮影機材、透明な箱、煙発生装置等が思い浮かびますが、コストをかけないようにするのが課題です。

そこでSくんが思いついたのは次なる段取り。

暗室はekreaパーツの打合せルームを使い、開口部には光が漏れないようにしっかり目張りをし、レーザーは同僚Mくんが大学時代に卒業制作で使ったレーザーポインターを購入したのを思い出し、撮影は勿論スマホを活用、さらに透明な箱はアクリル板で作りました。

そして最も難しかった煙は、水蒸気を含んだFOGやミストでは上昇気流まで至らず、結論は蚊取り線香を使って撮影することにしたようです。長時間にわたり密室に篭り、無事撮影が終了し、Sくんが部屋から出て来た時は、蚊取り線香の臭いが衣服に浸み込んでいました。まさに汗と煙の結晶でAirtoolは誕生しました。