ヒントは昔の台所に!もっとシンプルで自由な発想でキッチンをつくろう

ヒントは昔の台所に!
もっとシンプルで自由な発想でキッチンをつくろう

日本のキッチンといえば、システムキッチンを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。欧州で一般的なビルトインキッチンとは異なる、独自の発展を遂げてきた日本のシステムキッチンですが、キッチンデザインの原点を知ると、もっと自由な発想で自分のキッチンを考えることができます。

システムという魔法の単語が作り上げた、日本のキッチン

システムという単語の意味は、多数の複雑な要素や部品から構成されながら、統一体を作っている組織や体系のことです。システムと聞いただけで、すべての要素や部品が繋がり、互換性や連動性があるような気になりませんか。

国内では高度経済成長の絶頂期の1970年代から1980年代にかけて、○○システム・システム○○といった商品やサービスが流行しました。当時の消費者からすると、システムが冠にくっつくだけで、製品の自由度が増し、利便性への期待が大きく膨らむような魔法の単語だったようです。

欧州ではビルトインが一般的、日本は品揃え重視のシステム化が主流に

システムキッチンという和製英語が業界に定着したのも丁度その頃のことで、国内にも多くのキッチンメーカーがひしめき合い、しのぎを削っていました。

そもそも今のような業界や販売方法になったシステムキッチンのルーツは欧州にあります。欧州ではビルトインキッチンと呼ぶのが一般的。つまり部材や部品をはめ込んで構成されていてメーカー間で規格や部品相互の互換性が前提条件になっているのです。

IKEAの売り場にはキッチンシンクや面材、引き出しレール、天板など部品が普通に陳列し、販売しています。ところが、日本国内のメーカーは部品や部材の情報をほとんど開示していません。それどころかブラックボックスがあったほうが、競争を優位に進められることから、どんどん互換性や連動性が失われていきました。今では国内メーカーが発信しているシステムキッチンのシステムの意味は「統一体」というより、「品揃え」と訳した方が相応しいかもしれません。

シンプルだった昔の台所に習う、キッチンデザインの原点

バブル経済全盛期の頃のシステムキッチンは、使い勝手よりもデザインや斬新な機器など、高付加価値化に軸足を置いて競い合う製品になっていました。当時、筆者が衝撃を受けたのが、或るメーカーが銀座に出店したキッチンショールームです。 そのメーカーは、独自のピアノ塗装技術により、奥行きを感じる深い光沢の扉面材を売りに、高級車並みの一桁違う高額商品を展示販売していました。

当時は、現在よりもキッチンを製造する会社数が多かった時代ですし、異業種から参入するケースも多くありましたので、まさに生き馬の目を抜くような時代に目撃した出来事でした。

しかし、やがてバブル経済が弾け、住宅着工数も減少に転じた頃から、資本力・展開力の乏しいキッチンメーカーが廃業・倒産、経営統合の波に呑み込まれ、その数も激減してしまいました。

そのような経験を経てしばらくすると、住宅建築家らが先頭に立ち、改めてキッチンの定義や概念を根底から見直す動きが出てきました。そもそも建築家にとっては、キッチンや家具も設計の一部と考えている訳ですから、それほど難しいことではなかったかも知れません。

昔の日本家屋にあった台所には、水道の蛇口、水受け用の人研ぎの桶、その横にガス台があるだけで、必要最低限の設えと要素だけで成り立っていました。彼らはキッチンそのものをもっとシンプルに自由に捉え、削ぎ落すことがキッチンデザインの原点であることを証明したのです。

キッチンに必要な部品を知って、もっと自由な発想を

蛇口は水栓金具に。天板は人研ぎからステンレスや人工大理石に。桶からシンクにに変り、換気扇はレンジフードに。それぞれ呼び名は変わりましたが、部品が揃えば、昔の台所と同様のキッチンが完成です。コンクリートブロックなどの組石工事や金属・木製の素材を上手に利用して脚を作り、カウンターを載せて部品を取り付ければ、出来上がりです。

残りは収納をどうするかですが、スケルトンのキッチンの場合は、市販されているプラスチックボックスやオープン棚などをカウンター下部に置いて使うのも面白いでしょう。

このように建築家の方々や工務店の方々、さらにDIYで作ろうとしている方々にとっても、部品を知れば知るほど自由な発想で面白いものが作れるはずです。

キッチンは3つの要素に分類して考えると作りやすくなる

キッチンを1.シンク・天板、2.箱(収納家具)、3.機器類・水栓金具の3つの要素に分けて考えるとシンプルでわかりやすいでしょう。

天板はステンレスや人工大理石などを使ってサイズやシンク穴などをオーダーして作ることができます。箱は大工造作や建具屋さんでも作ることが可能です。キッチンメーカーで機器まで製造している会社は多くはありません。専門機器メーカーへのOEM委託生産が一般的なのです。

ブランドにこだわらなければ、この3つの要素を揃えることで、誰にでもキッチンを作ることが可能になるのです。

プロなら知っているキッチンのホント

キッチンについていろいろ書いてきましたが、きちんと住宅の設計をしている建築家やモノづくりに特化している工務店であれば、このようなことは公知の事実です。キッチンはエネルギー補給基地ですし、家族や友人が集う場所にもなります。

手間暇を惜しまない住宅作家やつくり手は、この3つの要素を十分理解し、アッセンブルするノウハウを所持し、住まい手に合った唯一無二のキッチンを提案してくれるはずです。

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