輸入キッチンって、一体何を輸入しているのか知っていますか?
輸入キッチンって、
一体何を輸入しているのか知っていますか?
かつて高級キッチンとえば輸入キッチンだった時代がありました。しかし最近はその考え方が大きく変わってきています。替わって注目されているのは、国内で調達できる部品を使ってアッセンブルするオーダーキッチン。ほかでは聞けないその理由をお話しします。
この20年間で輸入キッチンの存在感は薄れてきた
創業時だった今から約20年前のこと、当時、たまたま仕事の関係でやり手のデザイナー兼社長のE氏と知り合いました。そのE氏が経営する会社は、高級感が漂う輸入住宅の設計・施工を主業としながら、イタリア人脈を活用して、ヨーロッパの家具やキッチンなどの輸入販売も手掛けていました。
そうしているうちに、親子の経営スタイルが異なり、確執にまで発展して話題になった家具量販店O家具との商談がまとまり、O家具の店頭でイタリア製の輸入キッチンの販売をするようになりました。交流があった当社はE氏が経営する会社の協力会社としてシンクや人工大理石天板のアッセンブルや現場取付けを手伝うことになったのですが、一時期は本当に良く売れました。
当時は国内のシステムキッチンメーカーも全盛期。どのメーカーも品質に厳しい国内市場と対峙するために、量産に堪えうる低コストで丈夫な面材の開発に力を入れていました。
一方でドイツやイタリアなどから輸入される輸入キッチンは、デザインや機能に誰もが憧れの気持ちを抱くほど洗練されていて、明らかに量産される国内のシステムキッチンとは一線を画していました。日本よりもはるかに以前から、素材の開発は先を行っていたからです。そこにデザイン力が相俟ったキッチンとあっては、売れるのも当然だったかもしれません。
しかし近年は日本国内でも素材革命が一巡したことと、素材だけを大量に輸入して在庫する商社が登場し、ヨーロッパの素材に引けを取らないモノも次々に登場しました。さらにその素材を利用して家具を作る企業も増えたことから、輸入キッチンの存在感が薄れてきたようです。
輸入キッチンといっても実際に輸入しているのは箱と扉だけ!
そもそも輸入キッチンとは、キッチンという製品の何を輸入しているのかお分かりですか。まずレンジフードやIH、食洗機などは、日本の電圧に適合したものでなければ作動しないし、水栓金具は公益法人日本水道協会(日水協JWWA)の規格をクリアしたものでなければ原則使えません。またキッチンシンクにしても、日本では欧米の食文化と異なり、茹でたり、煮たりと湯や水を大量に流すことから、欧米のものに比べると排水の口径も大きな設えが必要です。さらにシンクと天板は、一体にして現場搬入が鉄則ですので、輸入には適さない代物です。
ここまで書くと勘の鋭い読者の皆様なら答えが見つかっているはずですね。輸入キッチンと言いながら、輸入しているのは、箱と扉だけで、他の部品や機器は国内調達なのです。キッチンはアッセンブルのノウハウがあれば作れますので、海外に行って箱と扉だけ購入してくれば、国内でキッチンに仕立てるのは意外と簡単なことなのです。箱はユニットごとに組立てられて運ばれてきますから大きなスペースをとり、輸送コストが嵩みます。コストが嵩むということは、日本国内での販売価格もそれなりに高額になってしまうのは仕方がありません。
わざわざ海外から空気を運ばなくても
ドイツのキッチン高級ブランドであるジーマティックやポーゲンポール(2020年6月ドイツ本社が破産)もひと昔前までは、国内の高級マンションに結構な量が採用されていましたが、現在では様子が少し変わってきたようです。
箱や扉の面材に使用する素材が低圧メラミンや高圧メラミンが主流となった現在、海外から素材を輸入する意味が問われています。国内でほぼ同じような素材で箱や扉を作ることができれば、わざわざ海外からかさばる箱を運ばなくても良いという考えが出てくるのも当然のことでしょう。
喩えて言いますと、高級ブランドのヴィトンやグッチのバッグでなくても構わないなら、国内でも技術のある革職人を抱えている工場から良い品質の製品を購入する選択肢も見直そうということです。
話は戻りますが、箱と扉面材を輸入して、残りの部品と機器を国内調達に頼る輸入キッチンと、国内で調達できる部品を使ってアッセンブルするオーダーキッチンの差は、場面ごとに評価が変わるブランド価値でしかないような気がします。