コアハウスの第2回

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々35〉
「設計力と確かな大工の手仕事で、長く心地よく暮らせる家に」(後編)
有限会社コアハウス 代表取締役 千葉大輔さん

コアハウス代表の千葉大輔さん

引き続き、広島県福山市で評判の工務店「コアハウス」の家づくりの魅力に迫ります。

前回は、代表・千葉大輔さんの住まいへの思いと、同社が掲げる「森品質」の家をご紹介しました。この後編では、暮らしの中で愛着が深まっていく「大工の手仕事」と「造作」にスポットを当てます。

あえて手間のかかる「造作」を選択する理由は何か? そして、職人たちはどのようにして、その高いクオリティを実現できているのか。施工事例を通して探っていきます。

さらに、ekrea Partsの「キッチン・キット」や「フレックスシンク」を採用した、手触りのいい造作のキッチンと洗面台の事例もあわせてご紹介します。

前編はこちら

家具デザイナーの小泉誠さんとの仕事が「造作」をさらなる高みに

木工事でつくった窓辺の収納付きベンチ

前回ご紹介した、屋根の太陽熱を活用して暖房・給湯・換気を行う「OMソーラー」と、構造躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)を分離して高い住宅性能と可変性を実現する「木造ドミノ工法」。

これらを習得し、環境負荷の少ない質の高い「木の家」を提案できるようになった千葉さんは、家づくりにおいてもうひとつ、大切なものを手に入れます。

それが、大工の手仕事による「造作」です。

小泉誠さんがデザインした「わざわ座」の窓枠ベンチ

「私は本当に運がいいのか、木造ドミノを勉強していたときに、会の運営を担っていた相羽建設(東京)さんにお誘いいただき、メンテナンス・リフォーム部の拠点としてつくった『あいばこ』を見せていただいたんです。そこで、ある家具に釘付けになりました」(千葉さん、以下同)

それは、小泉誠さんがデザインした若葉家具のデイベッド。東京で出会った家具が、実は広島県府中市の、それもコアハウスのすぐ近くにある家具メーカーの製品だったことに驚き、地元へ戻った後、若葉家具の店を訪ねたことから交流が始まります。

コアハウスが施工した若葉家具本社リノベーション

小泉誠さんは日本を代表する家具・空間デザイナー。「あいばこ」の内部デザインを手掛けたことがきっかけとなり、のちに小泉さんのデザインを各地の工務店や大工が造作するネットワーク「わざわ座」が生まれます。

これに先立ち、若葉家具は小泉さんのよきパートナーとして、住まう人の暮らしや空間に馴染む「生活道具」としての家具を展開していたのです。

正面にあるのは「キッチン・キット」をベースにした「わざわ座」のキッチン

千葉さんと若葉家具の井上社長の出会いが、新たなチャンスに繋がっていきます。

「その後、会長宅の家づくりについてお声がけいただきました。当時、若葉家具は小泉さんに設計を依頼しており、その繊細なニュアンスを汲み取って施工できる工務店を探しておられました。そうしたご縁から、コアハウスも一緒に家づくりへ参加することになったのです」

それが、次に詳しくご紹介する「若葉のいえ」です。コアハウスでは以前から大工による造作を行っていましたが、当時使っていたのはシナランバーやシナベニヤが中心。この「若葉のいえ」を経験したことで、家具に使われる木材や仕上げを建築の造作にも取り入れるようになり、造作の素材や表現の幅が広がっていきました。

「家具+家」づくりを経験したことで、造作の提案の幅が広がった

キッチン側からダイニングと小上がりを見たところ

こちらは、「家具+家」づくりから生まれた「若葉のいえ」(2019年)です。

コアハウスが構造躯体(スケルトン)の設計と施工を担当し、小泉さんが内装デザイン(インフィル)担当。家具はすべて若葉家具が製作しました。

畳の小上がり側からキッチンを見たところ

素材や仕上げのテイストを揃えることで、家具も「暮らしの道具」として空間に溶け込み、お互いを引き立て合っています。

キッチンは、シンク部分が対面のL字型プラン

キッチンはダイニングと対面する側にシンクを設け、壁側にコンロを配置したL字型のプランに。

このキッチンは、キッチン・キットのⅡ型キッチンのシンク部(W2100mm×D650mm)とコンロ部(W2897mm×D650mm)をベースに、小泉さんがデザインした「わざわ座」のキッチンです。

面材はホワイトアッシュで製作。無垢材でつくった取っ手がいいアクセントになっています。

既製品にはない温もりを感じるキッチン

この「若葉のいえ」で初めてキッチン・キットをベースにした「わざわ座」のキッチンをつくった千葉さんは、その納まりのよさに感動。「わざわ座」の座衆(加盟店)になり、この大工の手の温もりが感じられる「わざわ座」のキッチンを、キッチン提案の選択肢として取り入れるようになりました。

社内の造作への取り組みにも変化が。

「OMソーラーに加入して『木の家』づくりに取り組むようになって以降、大工による造作自体は行ってきました。しかし、この家を手掛けたことで、デザインやクオリティがさらに上がりました。今では、大工の方から『こうしたら早くつくれるよ、安全になるよ』と提案してくれるようになり、造作のレパートリーも増加。お客さんにも大変喜んでもらっています」

次はその事例をご紹介しましょう。

雁行に配置することでコンパクトな家事動線を実現したⅡ型キッチン

ダイニングテーブルはアイランド部分と横並びに

こちらは、今年の春に完成した「おおきな屋根と、となりの暮らし」のキッチンです。

プランはⅡ型。アイランドの部分にはリビング収納がある、キッチン・キットの「Ⅱ型キッチン(シンク部)」(W1800mm×D900mm)を採用し、ダイニングテーブルと繋げました。

そして壁側には、「Ⅱ型キッチン(コンロ部)」(W2100mm×D650mm)を設置。ずらして配置することで、「調理・配膳・片付け」などの流れがスムーズなキッチンになりました。

キッチンの奥には洗面とランドリールームがある

シナ合板でつくった面材と無垢の杉床との相性も抜群です。

雁行にしてダイニングテーブルを配置したことで、コップ類や食器、カトラリーの収納スペースが。食事中もすぐに取り出せます。

キッチンのディテールにもこだわりが

キッチンの面材に合わせ、壁側の吊り戸棚の扉もシナ合板にしたことで、統一感のある木のキッチンに。

シンクは、ekrea Partsの「ポケット付きEシンク」を採用しました。対面キッチンでは、出っ張りが気になる洗剤ボトルやスポンジもすっきり!真鍮のタオルハンガーもいい感じ。部材を自由に選べるのも造作のよさです。

キッチンのすぐ横にあるランドリースペース

リビングやダイニングからは見えませんが、キッチンのすぐ横にはランドリースペースがあります。

洗面台は、掃除しやすいセミオーダー人工大理石一体洗面カウンター「フレックスシンク」のハイバックタイプを採用。下台は木工事で造作したので、箱形のシステム洗面台のような圧迫感もありません。

幅をミリ単位で発注できる商品なので、横に置く洗濯機やガス乾燥機との取り合いもすっきり。きれいに納まっています。

和モダンの空間に馴染むペニンシュラキッチン&造作カウンター

壁側にはキッチンと同じ幅のカウンターを造作

こちらはホワイトアッシュのサイドパネルと扉材を張った、ペニンシュラタイプのキッチンです。

壁側には集成材で家電置き場兼作業スペースになるカウンターを造作しました。

珪藻土の壁に馴染むホワイトアッシュの扉

ウォールナットの無垢材でつくった取っ手がいいアクセントに。珪藻土の壁とも相性がよく、落ち着いた和モダンの空間によく馴染んでいます。

リビング側の床にはオークを使用

キッチンと繋がるリビング、ダイニングの窓周りは、障子の建具でまとめました。落ち着いた色調のオークの床と相まって、住まい手が望んでいた心地よい和モダンの雰囲気になりました。

洗面台も暮らし方に合わせて大工の手仕事で造作

収納カゴの高さに合わせて下台に棚を設けた事例

千葉さんは洗面台も、空間や暮らし方に合わせて造作することも多いと言います。

そのときによく使うのが、セミオーダー人工大理石一体洗面カウンター「フレックスシンク」のハイバックタイプだそう。

上の写真の事例はその一例。収納カゴの高さに合わせて下台に棚を設けました。両脇の壁の部分にキッチンパネルを張ることで、コックピットのような雰囲気に。

「フレックスシンクは、ハイバックタイプは壁面に水栓とハンドルが付いていますし、排水口もシームレスなので、汚れが溜まりにくい。住まい手にとっては、掃除のしやすさが選ぶポイントになるので、よく提案しています。あと、図面に合わせてサイズを決められるのがいいですね。不易な飽きのこないデザインも気に入っています」

木枠のミラーキャビネットと調和する木の扉の洗面台

サイズは1ミリ単位で調整できるので、こちらの事例のように、スペースを振り分けられます。

写真のように、木の扉を付け、家具のような佇まいの洗面台を造作することも。

白化粧したシナ合板を張った洗面台

髪の毛が落ちて床が汚れやすい場所ですが、下台の下部を空ければ、ロボット掃除機が掃除してくれます。

写真のような下台にすれば、掃除してくれるだけでなく、洗面台の下を充電基地にすることも可能です。

トイレと浴室の間のわずかなスペースを活用!

こちらは、トイレと浴室の間のわずかな壁を使ってつくった洗面台です。このサイズも、フレックスシンクを使えば可能です。

トイレの壁とサイドパネル、木枠のミラーキャビネットを同じ素材(シナ)で揃えたことで、周囲に馴染む洗面台になりました。

廊下の突き当たりにつくった小さな洗面台

こちらはさらにコンパクトな洗面台の例です。

木の幕板を張り、その下には、トイレの備品もしまえる収納をつくりました。造作すれば廊下の幅に合わせた、使い勝手のいい洗面台もお手の物です。


インタビューの最後に、なぜ、キッチンや洗面台まで造作するのか聞きました。

「図面に描いたものが現場に取り付けられて、『ああ、素敵にできたな』と感じる瞬間が喜びなんですよね。設計担当が暮らし方を聞いて形を考え、大工さんが板材から一枚一枚切り出して、それが現場に収まる。そして、お客さまも『美しくて使いやすい』と喜んでくださる。そうしたきちんとした手仕事やしつらえのプロセスを踏んでいくことこそが、工務店の喜びであり、『工務店らしさ』だと思っています」

「造作」が作り手の喜びとなり、住まい手の愛着に変わっていく。これこそが、ものづくりに真摯に向き合う工務店の、本当の姿なのかもしれません。


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