コアハウスの第1回

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々35〉
「設計力と確かな大工の手仕事で、長く心地よく暮らせる家に」(前編)
有限会社コアハウス 代表取締役 千葉大輔さん

コアハウス代表の千葉大輔さん

今回は、広島県福山市で地元でも評判の工務店「コアハウス」の魅力を、前編・後編の2回にわたってお届けします。

代表の千葉大輔さんは、自身が手がける心がほぐされる木の住まいを「森品質」の家と名づけました。目には見えない空気や温度、自然素材の造作がもたらす手触りのよさ、そして経年の美しい変化。そんな心地よい家を、1軒1軒丁寧に設計・施工しています。

前編となるこの記事では、千葉さんの家づくりへの思いと、そのこだわりが詰まった実例をご紹介。そこには、大工の確かな手仕事で仕上げられたekrea Partsの造作キッチンも。あわせてレポートします。

「OMソーラー」との出会いが、目指す家づくりの扉を開いた

構造材は周辺地域の山から切出した国産材を使用

コアハウスは、1990年に千葉さんの父・桂吾さんが創業しました。今年で創業36年になります。

今では、1軒1軒、住まい手の「幸せな物語」が始まる丁寧な家づくりをしているコアハウスですが、そのスタートは決して平坦なものではありませんでした。

「私がまだ小学生の頃、新しくできる工務店の名前が『コアハウス』だと聞いて、『怖い家つくるの?』と聞き返した記憶があります(笑)。でも父にとっては、ごまかしのない家の本質(コア)を突いた、きちんとした家づくりをしていくという強い意思表明だったようです」(千葉さん、以下同)

しかし設立当初は、決められた仕様をつくる下請けの仕事ばかり。工場から届いた新建材を組み立てるだけの毎日が続いたと言います。

「私が父の仕事を手伝いながら建築の現場に入った頃も、そんな状態が続いていました。下請け仕事が中心で、住まい手の顔が見えにくい状況に、自分の仕事としてのやりがいを見いだせずにいたのです」

仕上げは無垢の木床に珪藻土の壁が基本

しかし、そこから大きな転機が訪れます。

「住まい手と直接向き合い、自分たちがよいと思える家をつくるためには、元請けとして家づくりに関わる必要がある――そう考えた父は一念発起し、東京藝術大学名誉教授で建築家の奥村昭雄氏が考案した「OMソーラー」に加盟したのです」

OMソーラーとは、太陽の熱を利用し、家全体を温めたりお湯を沸かしたりする、自然エネルギーを活用した仕組み(パッシブソーラーシステム)のこと。省エネでエコ、自然素材との相性もよく、当時参加していた著名な住宅作家たちが、デザイン性や構造、断熱にこだわった住宅を次々に発表していました。

目的を失いかけていた千葉さんでしたが、父に連れられてOMソーラーの経営者会議に参加。そこで見学した工務店さんの家に衝撃を受けることになります。

「私にとって、初めて見る『木の家』でした。こんな家づくりができるなら面白いな!と、その後、精力的に各地の加盟工務店さんが建てた家や、建築家の手がけた家を見学して回りました」

この経験が千葉さんの心に火をつけ、コアハウスの可能性を大きく広げていくことになるのです。

2004年築のモデルハウスは、まさに木の家づくりの「教科書」

モデルハウス「MORI SPACE」

千葉さんは、父の仕事を手伝うことを決め入社。まず手掛けたのがモデルハウスの建設です。

「モデルハウスを建てたのは2004年のことです。まずは、『OMソーラーの家』も、本当の木を使った『木の家』も、お客さんに見てもらえるものがないと、売れないと思ったからです。とはいうものの、父も私も無垢の木の設計の経験はありません。そこでOMソーラーに加盟していた建築家に依頼し、図面を描いてもらいました」

20年以上の月日を経過したモデルハウス2階のLDK

このモデルハウス(MORI SPACE)を実際につくり、自分たちで「木の家」を経験したことは、その後、自社で設計を積み重ねていく出発点になりました。そして今も、「木の家」の20年後を先に体感できる場として、現役で活躍しています。

「見学に来られた方は、玄関開けたら木の香りがすごくすることに驚かれます。そして、お話をしていると、20年以上経っているようには見えないと、よく言われます。自然素材の味わいが深まっているのに、古さを感じさせないのは、依頼した建築家さんの設計力の賜物だと思っています」

現在は1階を事務所スペースに

コアハウスにとってこのモデルハウスは、「木の家」をつくるうえで原点的な建物。その後の家づくりで、おさまりや仕上げを確認できる「教科書」的な存在になっています。

「木の家のよさは写真や言葉だけでは伝えにくいため、スタッフ自身も日常的に木の家の空気感や経年変化に触れられるよう、『MORI SPACE』を事務スペースとしても活用しています」

経年変化した無垢床はキズもいい味に

千葉さんは、モデルハウスで、無垢の木で建てた家の心地よさだけでなく、キズのことも見てもらいたいと言います。

「それも知っておいてもらいたい、大事なことだと思っています。『こんな感じでキズにはなります。でも肌触りいいですよね。温もりがありますよね。深呼吸したくなりませんか』と。キズも含め時間が経っているというところに、価値があることも感じてもらいたいと思っています」

モデルハウスを建てたのち、耐震性に優れ、家族の成長やライフスタイルの変化に合わせて間取りを変えられ、長く住み継げる木造ドミノ工法を採用。コアハウスの誠実な家づくりの形が完成します。そして、「森品質」の家という名称で現在に至っています。

ではさっそく、コアハウスが建てた家をご紹介しましょう。

薪ストーブの炎と自然素材に囲まれ、家族ひとり一人が心地よく暮らせる家

自然に囲まれた景色と馴染む、そとん壁の外観

こちらは、夫婦と幼い子ども2人が暮らすお宅です。

東京での賃貸暮らしでは、狭さと、子どもの足音・声に気を遣う日常にストレスを感じ、移住を決意されたと言います。そして、豊かな自然が残るこの地に家を建てることにしました。

外壁に選んだのは、南九州の火山噴出物「シラス」を主原料とした「そとん壁」。その自然な風合いが、周囲の景色にしっとりと溶け込んでいます。

100%自然素材でありながら、抜群の防水性や断熱性を誇り、メンテナンスの手間も少ないそとん壁は、長く快適に暮らす住まいに恰好の外壁材です。

薪ストーブと吹き抜けがある20畳のLDK

住まい手が実現したかったのは、「自然に負荷をかけない、昔ながらの丁寧な暮らし」でした。 畑を冷蔵庫代わりにして新鮮な野菜を育て、極力電気やガスに頼らず、冬は薪ストーブの炎を眺めて過ごすことを希望していました。

もともと食に関わる仕事をされていたこともあり、「極力自然に負荷をかけず、土に触れながら食材を育てる丁寧な暮らしがしたい」と、豊かな自然が残るこの地に家を建てることにしました。

写真は1階のLDK。室内は杉の無垢材と珪藻土の壁で仕上げられており、自然素材に包まれた家の中心に薪ストーブを設置しました。この薪ストーブは吹き抜けを介して、家全体を優しく温めてくれます。

階段の上り口付近からダイニング方向を見る

階段の上り口は、子どもたちが多感な時期になっても、家族が自然と顔を合わせられるよう、キッチン側に向けてプラン。そして、リビングとダイニングは造作した収納家具で緩やかにゾーニングされています。

Ⅱ型キッチンの対面部分の先には、食事しているときも家族の顔が見える丸テーブルがあります。そして、障子の向こう側には、アウターリビングにもなるウッドデッキが広がります。

薪ストーブ越しに見た窓辺のデイベッド

家族の心地よい居場所が随所にあるこちらのお宅。そのなかでも住まい手の一番のお気に入りは、地元の家具メーカー・若葉家具に依頼して造作したデイベッドがある場所です。

これは、奥さまがinstagramで窓辺の心地よい居場所の写真を見つけ、「ぜひ取り入れたい」という要望から実現しました。

デイベッドの先には、客間にもなる和室がある

窓からは、季節の移ろいが感じられ、暖かい日差しが降り注ぎます。大人だけのときは、飲み物を片手にくつろいだり、子どもと一緒のときは、絵本を読んであげたりと、家族が思い思いに過ごせる特別な空間となっています。

家族の時間を育む、ekrea Parts「キッチン・キット」で造作したキッチン

キッチンは「キッチン・キット」を採用しⅡ型プランに

奥さまがこだわったもう一つの場所がキッチンです。

それまで暮らしていた家のキッチンは狭く、子どもたちが「お手伝いしたい~」と言ってくれても、「片付けないと無理だからダメ!」と声を荒げてしまうことが多かったそう。

そこでこの家では、家族で作業しやすいⅡ型キッチンを採用しました。「キッチン・キット」をベースに家具デザイナーの小泉誠さんがデザインした「わざわ座」のキッチンです。

キッチンとダイニングテーブルの配置が絶秒

対面のアイランド部分には、Ⅱ型キッチン(シンク部)W1800mm×D900mm、壁側にはⅡ型キッチン(コンロ部)W2700mm×D650mmをベースにして、扉材にシナ合板を張り、堅木の手掛けを付けました。そのことで、自然素材の空間に馴染むキッチンに。

調理中も作業がしやすく、ダイニングテーブルとの動線もコンパクト。配膳や片付けもスムーズです。

キッチンからは室内も外の景色も一望できる

シンク横には大型の海外製食洗機(ボッシュ)がビルトインされていますが、フロントパネルの部分にシナの扉材を張ることで、まるで家具のよう。

奥にあるパントリー側から見たキッチン

通路も作業台も広いので、子どもたちと一緒にキッチンに立っても狭さは感じません。

お手伝いしてくれることが日常となり、今では子どもたちも手慣れたもの。キッチンでの時間が家族の大切な時間に変わりました。

木の香り、薪の匂い、そして、家族が集う温かな場所。以前の家では想像もできなかった、四季を感じる心地よい暮らしがここにはあります。

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