ビルダーズ(最終回)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々34〉
「建築の力をみんなで共有。理想の住まいを築き上げる設計事務所発の工務店」(第3回)
株式会社BUILDERS 代表取締役 木平岳彦さん 代表取締役 近藤奈々子さん

近藤奈々子さんと木平岳彦さん(事務所にて)

神奈川県葉山町を拠点に、設計者・職人・施主が“横並び”のチームで家づくりに取り組む「BUILDERS(ビルダーズ)」。その取材記事の第3回(最終回)をお届けします。

これまでの2回では、共同代表の木平さんと近藤さんが、建築家・伊東豊雄さんの「大三島プロジェクト」で出会い、工務店を立ち上げるまでの経緯を伺いました。そして、その想いが詰まったBUILDERSが手がけた住まいを訪問。施主が実現した豊かなライフスタイルをご紹介してきました。

今回は、施主の満足度が上がる「造作」にフォーカス。引き渡しを間近に控えた2つの住宅の造作キッチンをご紹介します。どちらもオーダーメイドならではの「コの字型」を採用し、ベースにはekrea Partsの「キッチン・キット」が活用されています。施主のこだわりやライフスタイルに深く寄り添った、オリジナルのキッチンを詳しくレポートします。

1回目から読む

人が既製品に合わせるのではなく、造作で住む人の暮らしに寄り添いたい

近藤さんが描いたキッチンカウンターのスケッチ

前回は、在宅ワークが基本の奥さまのワークスペースや、サーフィンが趣味のご主人のための快適な動線や収納などの要望を、設計力と職人たちの造作でかなえたAさんの家をご紹介しました。

「設計は、お客さんの話をたくさん聞くことから始まります。そして、『この人たちがこんな家に住んだら、すごく楽しそうだな』という家を、図面に落とし込んでいきます」(木平さん)

そうして設計した家のキッチンや洗面は、既製品を使わず、造作することがほとんど。その理由を伺うと…。

「住む人がモノ(既製品)に合わせるのは、なんか変じゃないですか?造作することによって、家や住む人の暮らしに合わせられる方がいいと思っています」(木平さん)

事務所の片隅に置かれていた、大量の樹種サンプル

キッチンを造作するにあたり、よく使われるのがekrea Partsの「キッチン・キット」です。

「家具屋さんでフル造作すると、どうしてもコストが張ってしまいます。でも、『キッチン・キット』は価格も手ごろで、つくりもしっかりしている。これがあれば、現場の大工がつくれるのもいいですね」(近藤さん)

理想のプランを自在にカタチにできるのがオーダーキッチンの魅力ですが、特殊な形状になるとさらに費用が跳ね上がってしまいます。その点「キッチン・キット」なら、図面に合わせて天板のサイズや、使うキャビネットを発注でき、コストをコントロールできることも、大きなメリットです。

それでは、この「キッチン・キット」を活用した、できたばかりの2つの「コの字型キッチン」をご紹介しましょう。

Case.1:コの字のステンレス天板と飾り棚、家電置き場に囲まれたコックピットのようなキッチン

1階の書庫兼書斎。写真奥の階段を上がるとLDKにたどり着く(撮影:Akihiro Furuya)

まずご紹介するのは、建築面積13.3坪の小さな木造3階建ての家です。

1階は、大切な蔵書を収める書庫と書斎のフロア。床はアンティーク家具がよく似合う深みのあるフローリングにしました。両側の壁を全面書棚にしたことで、まるで本の中にいるような気分に。この場所は、施主が静かに読書や調べ物をするための空間です。

そして、降り注ぐ光に導かれるように階段を上がると、施主のこだわりが詰まったキッチンが現れます。

ダイニング側から見たキッチン(撮影:Akihiro Furuya)

こちらがそのキッチン。手元を隠す立ち上がりの向こうには、コの字型のキッチンとオープンな食器棚、家電置き場で四方を囲まれた、キッチン空間が広がります。まさに、料理に心地よく集中できる「自分だけのお気に入りの場所」です。

写真正面のオープンな棚は、施主の家族が3世代にわたって集めたカップ&ソーサーや、お気に入りの食器たちが並べられるためのスペース。その右手の造作したカップボードの上には、スコーンやパンを焼くための、本格的なガスオーブンが置かれる予定です。

ガスオーブンが置かれるカウンターを背にしてキッチンを見る(撮影:Akihiro Furuya)

実はこのキッチン。3枚のオーダーステンレス天板をつなぎ合わせたコの字型をしています。

手前から、ポケット付きEシンクがある対面部分のサイズはW2413mm×D650mm。そして奥のコンロ部分はW1032mm×D650mm。さらにその右手には、W1227mm×D450mmの作業台をつくりました。左右幅をミリ単位でオーダーできるのも魅力。

ekrea Partsの「3/4回転トレー」(参考写真)

さらに、シンク部とコンロ部の付け根の部分には、コーナーのデッドスペースを有効に使えるekrea Partsのコーナーキャビネット「3/4回転トレー」を取り付けています。

コの字だとコンロの左右に作業スペースができ、使いやすい

コンロの前に立つと、左右に作業スペースが確保され、まるでコックピットのよう。

コンロ下やシンク側の収納にはキッチン・キットのキャビネットを組み込んだことで、適材適所の収納が実現しました。

Case2:効率よく動けて快適!コの字型の天板の後ろにパントリーがあるキッチン

リビングから見たキッチンとパントリーの全景

次にご紹介するのは、腰壁や収納扉を、施主のお気に入りの色(ブルー)に塗装したキッチンです。天板は、キズが付きにくく清掃性にも優れたクォーツ キッチン天板 ウルトラサーフェスを採用しました。

ダクト部分を切り欠きしたコの字型キッチン

施主は当初、ダイニングで勉強する子どもを見守れるよう、アイランドキッチンを希望していました。しかし、それでは動線が長くなるうえ、リビングやダイニングへの行き来がしにくくなってしまいます。

そこで、対面部分をコンパクトにできるL型を採用し、さらにパントリーとの間には作業台と吊戸棚を設置。三方を囲まれるような、使い勝手のよい「コの字型」に仕上げました。

このこだわりの形状をカタチにするため、3枚のクォーツ天板をつなぎ合わせています。寸法もLDK全体のスペースを有効に使えるよう、細部まで緻密に計算されています。

手前にあるEシンクを備えた対面部分はW2660mm×D910mm(ダクト部分W545mm×D645mm切り欠き)。奥のコンロ部分はW900mm×D670mm。そして、パントリーに面した左手の家電置き場はW1760mm×D550mmと、それぞれの役割に合わせて無駄なく割り付けられています。

シンクの幕板部分を利用して包丁を収納

細部にもこだわりが。対面キッチンの場合、置き場所に困る包丁の収納。このキッチンは、「幕板包丁収納 W900用 4本差し」で解決しました。デッドスペースになりがちなシンク前幕板部分を有効活用!

キッチンからパントリーへもスムーズに行ける

こちらのキッチンが興味深いのは、パントリーがまるで舞台裏のような位置にあること。写真のように家電を置くカウンターの後ろに約3畳のパントリーをプランしました。冷蔵庫もこの場所に置くことで、キッチンがすっきりとした印象になりました。

細長いパントリーは収納スペースもたっぷり

パントリーとキッチンの間に壁をつくらないことで、取り出したものを持ち歩かず、作業台に置くことができます。これが意外と便利! キッチン上部にある吊り戸がある程度目隠しになり、リビング側からは内部が見えず、気になりません。

できるだけモノを持って動かず、コンパクトな動線で作業したいという、施主の願いがかなったキッチンです。

「BUILDERS」の社名は、スタンフォード大学でのティム・クックのスピーチから

現場で使うシートを前にお二人

施主の話をとことん聴いて、思い浮かべているライフスタイルを実現する家を建て続けているBUILDERS。

取材中、ずっと気になっていたことがあります。それは会社名。日本では、「工務店」という意味で使われる言葉を、なぜ会社名にしたのでしょう。

「会社名は、一緒にブランディングを一緒に考えてくれたいるクリエイティブディレクター・志伯健太郎さんの提案です。由来となったのは、Appleでスティーブ・ジョブズの跡を継ぎ、同社をさらに巨大な企業へと成長させたティム・クックが、2019年のスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチです。『世の中には、価値あるものを何も築き上げないくせに、リボンカットにだけ顔を出す人や、責任もないのに手柄だけを求める人が多すぎる。あなたたちはそんな存在になってはならない。築き上げる人になりなさい(Be a builder.)』彼が残したこの力強いメッセージのように、私たちも常に〝築き上げる人(Builder)でありたい――。そんな想いを、この社名に込めています。」(木平さん)

これからもお二人の設計力と施工力、そして造作へのこだわりが、満足度の高い家を「築き上げて」いくはずです。

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