ビルダーズ(2回目)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々34〉
「建築の力をみんなで共有。理想の住まいを築き上げる設計事務所発の工務店」(第2回)
株式会社BUILDERS 代表取締役 木平岳彦さん 代表取締役 近藤奈々子さん
近藤奈々子さんと木平岳彦さん(事務所にて)
神奈川県葉山町を拠点に、設計者・職人・施主が“横並び”のチームで取り組む家づくりを展開する「BUILDERS(ビルダーズ)」。その取材記事の第2回をお届けします。
第1回では、共同代表の木平さんと近藤さんが出会った、建築家・伊東豊雄さんの「大三島プロジェクト」での貴重な経験と、そこから設計事務所、さらには工務店の立ち上げに至る経緯、そして彼らの想いが詰まった住まいをご紹介しました。
今回の第2回では、大工や左官職人といったチームメンバーの造作で、住まい手の願いをかなえた住宅を訪ねます。そこには、ekrea Partsのキッチンアイテムも美しく馴染んでいました。手仕事とパーツがつくる心地よい空間を、詳しくご紹介します。
自然が豊かで通勤もラクな場所に、自分たちらしく暮らせる家を建てたい
庭の緑と調和するモルタルと杉板を組み合わた外観
今回訪れたのは、海からもほど近い場所に立つAさんご夫妻の住まい。左官の手仕事が光る洗い出しのアプローチを進むと、植栽の緑と木の外壁が湘南の日差しに映える美しい佇まいが出迎えてくれました。
2階はリビング(手前)とダイニングの間に吹き抜けがある
それまでは賃貸マンションで暮らしていたAさんご夫妻。サーフィンが好きなご主人の「海の近くに住みたい」という願いをかなえるため、家を建てることを決意。
そして、互いの勤務地のほぼ中央に位置し、海も山も近い自然豊かなこの土地を見つけ、家づくりがスタートしました。
パートナー探しには少し苦労されたそうですが、雑誌に掲載されていたBUILDERS(ビルダーズ)の施工例を見て「これだ!」と感じ、依頼することに。
プラン決定までにかかった期間は約半年。当時、小田原に住んでいたAさんご夫妻は、2週間に1度のペースで車を1時間半ほど走らせ、葉山の事務所に通ったといいます。
「その道中がとにかく楽しくて。『ここはこんな感じにしようか』『キッチンはこういうのにしようか』と、道々二人でいろいろな話をしたのがいい思い出です」(奥さま)
行きは、これから建てる家で実現したいことを話し合い、帰りは打ち合わせの内容を再確認する――。そんな車中での時間が、これから建てる家のイメージをしっかりと固めていきました。
2階のリビングとダイニングの間に設けた吹き抜け(撮影:Akihiro Furuya)
この家を建てるにあたって、お二人の要望は以下の通りです。
・吹き抜けがあって、梁が見える天井表しの家がいい
・サーフィンから帰ってきたら、すぐ片付けられて、お風呂に入れる動線がある間取り
・セカンドリビングにもなる、ストーブのある広い土間スペースが欲しい
・山側(北側)の景色を取り込む窓が欲しい
・在宅ワークが基本の奥さま用のワークスペースが欲しい
・使い勝手のいいキッチン。天板は人造石左官研ぎ出し仕上げに
・ごろんと寝転がれて、来客が泊まれる和室も欲しい
車中での会話を重ねる中で、要望は増えていきましたが、設計力と職人たちの造作で、かなえることができました。詳しく見ていきましょう。
1階は土間を真ん中に。ワークスペース&サーフィンから帰宅後の快適動線も実現
1階の土間スペースの左右には、水回りと寝室・ワークスペースを配置
玄関の引き戸を開けると、ストーブが置かれた、約9畳の土間スペースが。その左右には奥さまのワークスペース(写真左)と、シュークローゼット(写真右の開口の奥)があります。
ご主人はサーフィンから帰ってくると、外で砂を落とし、サーフボードをシュークローゼットにしまいます。そのあとは、隣の洗面・脱衣室、浴室へ直行。希望通りのサーフィンを楽しむライフスタイルに合ったプランが完成しました。
これで7つの要望のうち、「吹き抜け」「天井表し」「セカンドリビングになる土間スペース」「サーフィンから帰ったあとの快適動線」「奥さまのワークスペース」の5つがかないました。
クリの無垢材を使って造作した洗面台(撮影:Akihiro Furuya)
こちらはシュークローゼットの隣にある洗面・脱衣室です。高窓からの光とクリ無垢材の造作洗面台で、とっても明るい空間に! 実際の広さ以上の開放感があります。
シュークローゼットの反対側(写真左側)には、浴室があります。こちらを経由して、さっぱりした気分で、2階のLDKへ。
キッチンはⅡ型に。希望だった研ぎ出し仕上げの天板も実現
キッチンに立つ奥さま。横長の窓の向こうには山の美しい空景色が広がる
キッチンは、コンロとシンクを分けたⅡ型プランに。コンロがある壁側はW3055mm×D650mmに。そして、シンクがある対面部分は、W2200mm×D900mmと短めにして、出入りがしやすいように通路幅を確保しました。
奥行きを900mmにしたことで天板の上もゆったり。朝食をとるカウンターにも使えます。
人造石左官研ぎ出し仕上げは左官職人とAさん夫妻の合作
奥さまが希望した「人造石左官研ぎ出し仕上げ」は、セメントや白セメントに砕いた天然石(種石)や顔料を混ぜ合わせて塗りつけ、硬化した後に表面を機械や砥石で削り・磨き上げる伝統的な左官工法です。
研ぎ出すことで中に埋もれていた石の断面が浮き上がり、まるで一枚の天然大理石のような、美しい仕上がりに。
「BUILDERSが手がけた家を2軒見せてもらいました。そのうちの1軒のキッチンで、この仕上げを見て、わが家もぜひそうしたいと思いました。左官職人さんが中塗りした上に、二人でいろいろな色の種石を散りばめました。それを伏せ込みして、研ぎ上げてもらったもの。わが家だけのオリジナルです」(奥さま)
クリの明るい扉と研ぎ出し仕上げの天板の組み合わせが素敵!
扉材にはクリの無垢材を使用。真鍮(しんちゅう)の手掛け、研ぎ出し仕上げの天板との相性も抜群です。吊戸棚も同じクリの無垢材で造作。ノイズのない美しい空間になりました。
シンクや収納にはekrea Partsの商品を採用。使い勝手のいいキッチンに
キッチン・キットのフロアキャビネットを組み込んだ収納
コンロ側の収納部分は、キッチン・キットのカップボード「フロアキャビネットセット(W1540mm×D660mm用)」と木工事でつくったオープンな棚と組み合わせました。そしてシンク側には、ビルトイン食洗機を設置し、あとはオープンに。
シンクにはシャープなデザインで、ポケット収納が便利なEシンクに
対面側のシンクにはポケット付きEシンクを採用。そして、水栓はGROHE(グローエ)のMINTAと合わせました。研ぎ出し仕上げの天板とよく馴染んでいます。
「ポケット部分に洗剤ボトルやスポンジが置けるのがいいですね。角に少し丸み(10R)があるので、掃除もしやすいです」(奥さま)
コンロ側の収納(手前2つがキッチン・キットのフロアキャビネット)
キッチン・キットは現場で、周囲のインテリアに合わせて扉材を取り付ければ、オリジナルのキッチンが出来上がります。
こちらのお宅では、クリの無垢材の扉にすることで、ナチュラルテイストの家具のようなキッチンになりました
フロアキャビネットは、お皿やカップ、カトラリー類を収納
6つの引き出しにはお皿類や、カップやグラス、カトラリー・調理道具がすっきり納まっています。
コンロ脇にはフレームバスケットⅡを設置
コンロ下は、オープンな棚を設け、鍋やフライパンを収納。その奥のコンロ横スペースには、ekrea Partsの「フレームバスケットⅡ」を設置して、調理時に使う調味料類を収納しています。取り出しやすく、しまうときもラク!
キッチン横には、約2畳のパントリーも!
キッチンのすぐ横にはパントリーもあります。この中には、生活感が出がちな冷蔵庫も収納。両側に棚を造作して、たっぷりの収納スペースを確保しました。便利な場所にあるのに、リビングやダイニングからは目に入らないのも嬉しいポイントです。
残ったもうひとつの要望、「寝転がれて来客が泊まれる和室」も実現!
リビング側には造り付けのソファと小上がりの和室がある
もうひとつの要望、「寝転がれて来客が泊まれる和室」は、リビング側に、小上がりの和室をつくることで実現しました。
小上がりは少し高くして、立ち上がり部分には左官仕上げでニッチをつくり、お気に入りの小物たちを並べています。
3畳の小上がりは、布団を敷いても余裕の広さ。休日は造作3mソファ(写真手前)と小上がりに分かれ、ご夫婦でごろんと横になりながら、映画を観て過ごすこともあるのだとか。
これで事務所に打ち合わせに行く車の中で、二人が考えた要望は、すべて実現。心地よく暮らせる住まいの完成です。
次回は、ビルダーズが「キッチン・キット」でつくり上げた、素敵な造作キッチンを3例ご紹介します。お楽しみに!
株式会社BUILDERS(ビルダーズ)
神奈川県葉山町を拠点に活動する、設計事務所発の工務店。元宮大工の木村倫志さん、中嶋恭也さん、左官職人の寺地英次郎さんらとワンチームとなり、建築の可能性やこれからの暮らしの在り方を日々模索している。 施工範囲は神奈川県全域(その他の地域は要相談)。
〒240-0111 神奈川県三浦郡葉山町一色1790
℡:046-854-9008
HP: https://bldrs.co.jp/