MATOMA(後編)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々33〉
「設計とプロダクトで受け継がれる暮らしの〝かたち〟を提案(後編)」
MATOMA LLC(マトマ合同会社)共同代表 仲田裕貴さん 嘉成 龍さん
MATOMA共同代表の仲田裕貴さん(右)と嘉成 龍さん(左)
引き続き、茨城県を拠点に新築・リノベーションから暮らしのプロダクトデザインまで幅広く手がける「MATOMA LLC」の魅力的な仕事をレポートします。
前編では、自ら空き家をリノベーションした事務所をはじめ、豊かな森に溶け込む小さなキャビン、2025年度グッドデザイン賞を受賞した賃貸マンションのラウンジなど、これまでの代表的な仕事を紹介してきました。
この後編では、完成したばかりの二世帯住宅を訪問。住まい手の想いに寄り添い生まれた空間には、ekrea Partsの「キッチン・キット」を採用した、こだわりのキッチンがありました。あわせてレポートします。
ヴィンテージ家具を彷彿とさせる、木をあしらった外観
塊から赤茶色の木肌を削り出したような、マッシブなフォルム
今回訪ねたのは、都内の閑静な住宅地に建つ二世帯住宅です。
「1階は親世帯、2階が子世帯のプランです。将来、貸すことも考え、玄関は別に。界壁(遮音性能や耐火性能を満たした特殊な壁)を設けました。確認申請上は、専用住宅ではなく長屋扱いです」(仲田さん・以下同)
延床面積は142.42㎡。建ぺい率・容積率を最大限に活かすために総 2階に。外観の一部には、木があしらわれています。
「ミッドセンチュリーのインテリアがお好きな施主さんに合わせ、全体のベースカラーは黄赤系の白と赤茶色で構成しました。ご希望であった『塊としての量感』を表現するため、シンプルな量感のあるボリュームを少しずつずらしながら、一部を切り出す手法を採用。削り取られた内側から、ヴィンテージ家具を彷彿とさせる赤茶色の美しい木目が現れるような外観にしました」
ミッドセンチュリーの家具のような雰囲気に満たされた室内
子世帯のある2階へ
ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具を思わせる、深みのある赤茶色の木肌に包まれた階段を上がり、子世帯の暮らす2階へ。
リビングからダイニング・キッチンを望む
リビング側からダイニング・キッチンを見通したカット。18.4畳のLDKは、空間を雁行させ、床から天井まである窓から光を取り込むことで、実際の面積以上の広がりと開放感をもたらしています。
キッチンのさらに奥には、子ども部屋を想定した2つの個室と、洗面と浴室があります。
ダイニング側から階段方向を見る
床はナラのフローリングに。キッチンの天井は一段下げてシナ合板を張り、壁にも同じシナ合板を施してオスモカラーで仕上げました。リビングやダイニングと一体感を持たせながらも、どこか「おこもり感」のある心地よい空間を演出しています。
キッチンの奥に見えるのは、主寝室。その天井にも、キッチンと同じオスモカラー仕上げのシナ合板を張り、空間をシームレスに繋げています。
主寝室とウォークインクローゼット
主寝室の奥には2畳のウォークインクローゼットも完備。将来的に「貸す」という選択をしたときにも、あらゆるライフスタイルに柔軟にフィットする、収納充実の人気の3LDKプランです。
キッチンには「キッチン・キット」を採用。住まい手の要望を細部まで実現
キッチンはダイニングもリビングも見渡せる対面タイプに
キッチンには、ekrea Parts「キッチン・キット」I型(W2400mm×D720mm)を採用。背面には、同じ「キッチン・キット」のキャビネット(W2440mm×D450mm)と吊戸棚(W2440mm×D450mm×H700mm)を組み合わせました。
キッチン・キットのベースキットを組み合わせてつくったキッチン
それぞれの扉とサイドパネルにはシナ材を使用しています。キッチン本体の天板には、キズが付きにくいライトブラウンのクォーツ(ウルトラサーフェス)を採用。背面キャビネットにはナラの集成材の天板を合わせました。住まい手が選んだ名古屋モザイクのタイルとの相性も抜群です。
シンクには、スクエアシンクの美しさと掃除のしやすさを兼ね備えた「ポケット付きEシンク」を選びました。ポケットに洗剤ボトルやスポンジを収納できるため、天板はいつもきれいな状態をキープできます。
扉部分にも細やかな配慮が
引き出しの上部に施された、指かかりのよい滑らかな手掛けのディテール。木口部分にも丁寧にシナの無垢材をあしらうなど、細部まで手仕事の美しさが息づいています。使いやすさと、造作したキッチンの美しさを両立させたこだわりです。
仲田さんがデザインしたTESHINAのタオルハンガー
シンクの手前部分には、前編でもご紹介した、仲田さんが「手仕事で生まれた品で空間を創る」をコンセプトに立ち上げたブランド「TESHINA」のタオルハンガーを設置しました。
茨城県常総市の鉄工作家・古渡大さんとともに作り上げたこの一品は、伝統工芸品にも用いられる「漆焼付仕上げ」が施されています。その趣ある風合いが、キッチンにさりげないアクセントを添えてくれます。
玄関まわりにも住まい手の要望をかなえた造作が
子世帯の玄関。正面の扉の向こうには書斎がある
住まい手からは、「モノが多いので収納はできる限り多くつくって欲しい」という要望もありました。しかし、居住スペースを削って収納をつくると、暮らしの快適さは半減してしまします。
そこで、仲田さんは壁面収納や階段下を積極的に使用。
玄関の壁側につくった収納
玄関の壁には、一輪挿しなどが置けるピクチャウインドウをつくりました。 その周りは一見すると美しい木目の壁面ですが、実はすべて扉付きの収納になっています。
階段下のデッドスペースも使い勝手のいい収納に活用
さらに、階段下のスペースにも同様の工夫が。階段の形状に合わせてつくられた扉を開けると(右)、中はハンガーパイプを備えた、外出用のコート等をサッと掛けられるクローゼットになっています。
デッドスペースになりがちな階段下を、デザイン性を損なわずに有効活用したアイデアです。
玄関近くにつくった書斎
玄関近くには、住まい手が要望していた書斎もあります。広さは2畳ほどですが、カウンター越しに大きな窓を設けたのでゆったり。外に植えた木々を眺めながら、穏やかな気分で仕事ができます。
造作で随所に心地よい空間と収納を設けた住まい。ヴィンテージの家具を慈しむように、時間と空間の「間」を心地よく紡ぎ続ける、MATOMAならではの家が完成しました。
MATOMA LLC|マトマ合同会社
新築やリノベーションをはじめ、ブランドやプロダクトのデザインを通して、“受け継がれていく暮らしのかたち”をつくり出していくことを目的に、建築家の仲田裕貴さんとデザイナーの嘉成龍さんが2024年に設立。空間づくりを軸に多角的なデザイン活動を展開する。また、ローカルウェブマガジン「時と間」を運営し、まちのなかで営まれるお店やアトリエ、職人の物語を取材した記事も好評。
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