MATOMA(前編)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々33〉
「設計とプロダクトで受け継がれる暮らしの〝かたち〟を提案(前編)」
MATOMA LLC(マトマ合同会社)共同代表 仲田裕貴さん 嘉成 龍さん
MATOMA共同代表の仲田裕貴さん(右)と嘉成 龍さん(左)
今回は、茨城県を拠点に新築・リノベーションから暮らしのプロダクトデザインまで幅広く手がける「MATOMA LLC」を、前編・後編の2回に分けてご紹介します。
共同代表を務めるのは、一級建築士の仲田裕貴さんと、マンションリノベを数多く手がけてきたデザイナーの嘉成龍さんのおふたり。「時間が経っても、手に馴染むように愛され続ける空間を提案していきたい」と、2年前に立ち上げた会社です。
この前編では、自ら空き家をリノベーションした事務所をはじめ、豊かな森に溶け込む小さなキャビン、2025年度グッドデザイン賞を受賞した賃貸マンションのラウンジなど、これまでの代表的な仕事を紹介。
そして後編では、完成したばかりの二世帯住宅を訪問。住まい手の想いに寄り添い生まれた空間には、ekrea Partsの「キッチン・キット」を採用した、こだわりのキッチンが据えられています。その魅力を詳しくレポートします。
MATOMAの拠点は、空き家を活用した実験的な事務所兼住宅
MATOMAの事務所ががある「千波(せんば)のいえ」
MATOMAの事務所は茨城県水戸市にあります。
「築42年のハウスメーカーが建てた鉄骨造の建物です。元は住宅として使われていた空き家をリノベーションして、私の設計事務所とMATOMAのオフィス、住居をつくり、イベントやギャラリーとしても使えるようにしました。コンセプトは、『働くこと・暮らすこと・開くこと』を掛け合わせた〝複合住宅〟です」(仲田さん)
1階の打ち合わせスペース
オフィスがある1階の打ち合わせスペースでは、時折、ギャラリーやイベントが開かれます。そして、仲田さんの自宅である2階のLDKは、ワークショップや教室として使われることも。建物全体がフレキシブルに活用されています。
オフィススペースもフレキシブルな空間
設計事務所の一角にMATOMAのオフィスがあります。この場所から、新築、リノベーション、そしてプロダクトのデザインが発信されます。
〝受け継がれていく暮らしのかたち〟をつくり出すことを目指して
仲田さんが地元の作家と共同制作したペーパーフォルダーとタオルハンガー
今までこのシリーズでは、住まい手に寄り添い、実現したい暮らしをかなえてくれる、全国の設計事務所・工務店・リノベ会社をご紹介してきました。
今回ご紹介するMATOMAは、設計・施工をこなしますが、そのいずれの枠にも収まらない会社です。
「長年、マンションや住宅の設計に携わってきた私と、マンションリノベのデザインや内装を手がけてきた嘉成が、〝受け継がれていく暮らしのかたち〟をつくり出していこうと、2024年に茨城を拠点に空間デザインを行うデザイン会社“MATOMA”を立ち上げました」(仲田さん)
その展開は多岐にわたります。
「手仕事で生まれた品で空間を創る」をコンセプトに立ち上げたブランド「TESHINA」もそのひとつ。設計した住宅や店舗のために仲田さんがデザインしたものを、地元の作家が製作し、ネットや自社店舗で販売しています。
写真は、鉄の角パイプと曲げた丸鋼と革のカバーの3つ材料を組み合わせたペーパーホルダーと、一本の平らな鉄の棒を熱して曲げたタオル掛け。タオル掛けは片側のみで支え、横からスライドさせるシンプルな構造。漆焼付仕上げが、豊かな表情を生み出しています。
作家の手仕事と建築のアイデアを掛け合わせることで、空間を豊かに演出する、魅力的な品々が生まれました。
嘉成さんが手がけたTHE NATURE 八ヶ岳 “STAGE”
「社名のMATOMAは、〝間と間〟のこと。長く愛されるという時間の『間』と、空間の『間』。この2つの『間』をつなぐ会社にしたいと、この社名にしました」(嘉成さん)
こちらは、嘉成さんが八ヶ岳南麓の豊かな森に溶け込むようにプランした移動式の宿泊施設(キャビン)です。
最大4人が宿泊できる室内。トイレやシャワーブースも完備
室内の面積は18.72㎡とコンパクト。しかし、開口部を大きく取り、室内からそのまま連続するようにウッドデッキを設けることで、室内にいても、まるで自然に抱かれているような、豊かな時間と空間が生まれました。
壁と天井は福杉の無垢材を黒染色塗装で仕上げ、落ち着いたインテリアを演出。ウール混のファブリックをあわせたソファベンチは造作です。
調度品からカトラリーまで、嘉成さんが自らセレクト
オリジナルの家具を扱うインテリアショップ「IDÉE」でコーディネーターを務めていた経歴を持つ嘉成さん。今回のキャビンでは、設計だけでなく、家具やカトラリー、テーブルウェアに至るまで、自らの目で選び、コーディネートしています。
インテリアスタイリングで2025年度グッドデザイン賞を受賞
グッドデザイン賞を受賞したF・TOUR Longe Space
こちらは、嘉成さんがインテリアスタイリングを手がけた、賃貸マンションの居住者専用ラウンジです。ここでも、時間と空間、それぞれの「間(ま)」が見事に紡がれています。
「〝街〟と〝暮らし〟をゆるやかにつなぐ中間領域として、落ち着きと軽やかさを感じる空間にしようと考えました。そこで、木の質感や柔らかなトーンの家具を基調に、滞在者がそれぞれの時間を過ごせる居場所となるようデザインしました」(嘉成さん)
くつろぎ感を演出する家具や壁紙の色選びも秀逸
ラウンジの中心に据えたのは、低めで身体を包み込むようなソファと、天板の質感が引き立つローテーブル。
「くつろぎの姿勢を誘うスケール感や、家具同士の絶妙な距離感によって、居住者同士が気にならず、思い思いに過ごせる空間を意識しました。 また、家具の脚元をすっきりと軽やかに見せることで、空間全体に心地よい抜け感が生まれ、限られた面積でもゆったりとした気分で過ごせる場所になりました」
建物の設計からインテリアスタイリング、そして手仕事のプロダクトにいたるまで、時間と空間の「間」を心地よく紡ぎ続けるMATOMA。人の想いに寄り添い、長く愛されるデザインを提案するおふたりのアプローチは、住まいづくりにおいてどのように形づくられるのでしょうか。
後編では、仲田さんが手がけた最新の新築二世帯住宅を訪問。ekrea Partsの「キッチン・キット」を取り入れた、こだわりのキッチンとその空間の魅力を詳しくお届けします。
MATOMA LLC|マトマ合同会社
新築やリノベーションをはじめ、ブランドやプロダクトのデザインを通して、“受け継がれていく暮らしのかたち”をつくり出していくことを目的に、建築家の仲田裕貴さんとデザイナーの嘉成龍さんが2024年に設立。空間づくりを軸に多角的なデザイン活動を展開する。また、ローカルウェブマガジン「時と間」を運営し、まちのなかで営まれるお店やアトリエ、職人の物語を取材した記事も好評。
〒310-0851 茨城県水戸市千波町2596-6
Tel/Fax:050-8881-8001
mail:info@ma-to-ma.com
HP:https://toki-toma.ma-to-ma.com/