大幸住宅可児工房(後編)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々32〉
「『当たり前』を積み重ね、デザインも性能も妥協しない住み心地のよい家に」(後編)
株式会社 大幸住宅可児工房 代表取締役 畑佐 卓さん
大幸住宅可児工房・代表取締役の畑佐 卓さん
前回に続き、岐阜県可児市を拠点に、地域に根差した家づくりを展開する「大幸住宅可児工房」をレポートします。
前編では、代表の畑佐さんが「やらないこと」を明確にし、住まい手の視点から「当たり前」にかなえたい性能・安全性・デザインを積み上げてきた道のりと、その思いが詰まった2軒の住まいをご紹介しました。
続く後編では、暮らしの満足度を大きく左右する「造作キッチン」に焦点を当てます。デザイン性と使い勝手を両立させ、住まうほどに愛着が生まれるキッチンづくりの秘密をインタビュー。その美しい造作のベースとして採用された、ekrea Partsの『キッチン・キット』の魅力に迫ります。
素材感を大切に。会社のルールとして「〇〇調」はやらない
LDKとつながる「上恵土モデルハウス」の庭
大幸住宅可児工房では、家づくりを検討中の人がいつでも内覧できるように、2つのモデルハウスを用意。写真は、そのうちの1つ、「上恵土モデルハウス」です。
「地元の工務店として、ちゃんと地元の景色を残していくことも大事なことだと思っています。この上恵土モデルハウスが立つ場所は、中山道の宿場町として栄えた場所なので、歴史ある景観に溶け込むよう、黒い板張りと塗り壁の落ち着いた外観にしました」(畑佐さん、以下同)
庭に向かって大きく開かれたモデルハウスのLDK
延床面積は33.31坪。リビング・ダイニングには、吹き抜けと大きな開口を設けたことで、床面積では測れない開放感が生まれました。光が降り注ぎ、風が通る心地よい空間です。
その外には、周囲の視線を気にせず食事や読書を楽しめるタイルテラスも。大幸住宅可児工房が得意とするプランです。
キッチン・キットで造作した、家具のようなキッチン
天井を一段下げてゾーニングされたキッチンは、「キッチン・キット」による造作。
アイランド部分はⅡ型キッチン(シンク部・W1800mm×D900mm)を、壁側はⅡ型キッチン(コンロ部・W2550mm×D650mm)をベースに、シナ合板で仕上げました。
アイランドキッチンを配置することで、家族との会話と外の景色が楽しめるキッチンに。
「キッチンだけでなく、洗面や収納も造作しています。モデルハウスだからといって、お客様の建てる家よりいい状態(規模、仕上げ)にはしていません。有難いことに、モデルハウスと見学した家や実際に建てられた家との差がないと言われます」
なぜ、手間がかかるのに、あえて造作をするのでしょう。
「造作した方が空間の雰囲気がよくなりますし、建物全体が整うなと思うんです。だから、できるだけ既製品は使わず、自然素材で仕上げたい。シートやプリントといった既製品特有の建材も使いません。会社のルールとして、木目調やモルタル調などの『〇〇調』の素材はやめようと決めています」
ここからは、そうした想いでつくった4つの造作キッチンを紹介していきましょう。
事例1.キッチン・キットの壁付けに作業台をプラス。忙しい朝も快適なキッチン
忙しい朝は食卓にもなる作業台があるキッチン
最初にご紹介するのは、夫婦と子ども1人の家族3人が暮らす家のキッチンです。
「壁付けキッチンに作業台を付けるプランを希望するお客様が増えています。こちらはその一例です」
手仕事の温もりが感じられるモールテックスの作業台
カウンターとしても使う作業台は、大工による木工事。手触りがよく、防水機能に優れたモールテックスで仕上げました。マット仕上げにすることで、落ち着いた雰囲気に。
壁側のキッチンには、「キッチン・キット」のI型(W2550mm×D650mm)を採用。天板はステンレスのバイブレーション仕上げを選びました。
扉材をシナ合板にしたことで、LDKの空間によく馴染んでいます。
壁付けキッチンに作業台をプラスするとメリットがいっぱい!
作業台は、ダイニングテーブルに料理を運ぶ配膳台としても便利。そして、忙しい朝は、朝食をとるカウンターにも早変わり。0歩で並べられ、片付けもスムーズ。住まい手の要望をかなえた、オンリーワンのキッチンが出来上がりました。
事例2.Ⅱ型キッチンと吊戸棚をすべてキッチン・キットで。納まりの美しいキッチン
玄関側から見たLDK全景。左奥がインナーテラス
延床面積は29.80坪とコンパクトですが、玄関からLDKに入ると、写真のような伸びやかな空間が広がります。
リビングは床を30㎝ほど下げることで、個室感を演出。キッチンやダイニングと緩やかにつなげました。
このLDKに、さらに広がりを出しているのは、インナーテラス。格子の引き戸を設けたことで、外からの視線をさえぎりつつ、光と風を届けてくれます。天気のいい日は、第二のリビングにも。
キッチン本体も吊戸棚もキッチン・キットをベースに造作
このLDKの主役ともいえるのが、アイランドタイプのⅡ型キッチンです。
アイランド部分には、キッチン・キットのⅡ型キッチン(シンク部・W1800mm×D900mm)を採用し、ダイニング側に、グラスやカップの収納を設けました。
仕上げをオークの突板で統一したことで美しいキッチンに
吊戸棚もキッチン・キットのヒンジウォールセットの高さ(H)450mmを採用。レンジフードの下の面と合わせて、幅(W)730mmと900mmの2つを組み合わせたことで、美しい納まりに。和のモダンな空間に、しっとりと馴染んでいます。
事例3.深いリビング収納でLDKがすっきり!木の温もりのペニンシュラキッチン
ウッドデッキに沿って並ぶ縦長のLDK
こちらは、夫婦と子ども1人の3人が暮らす、延床面積30.31坪の平屋です。
「南北に細長い敷地で南側に道路があるため、西側に庭とデッキをつくり、並行してLDKを並べました」
パントリーをつくることで生まれたニッチはワークスペースを造作
キッチンは、キッチン・キットのI型キッチン(W2550mm×D1000mm)を使い、ペニンシュラタイプに。シナ合板の面材を張った、温もり感のある美しいキッチンです。
奥行き(D)を通常より100mm深い1000mmにしたことで、リビング収納の奥行きも300mmを確保。ダイニングで使う普段づかいの食器類や、A4サイズのファイルボックスが納まる、使い勝手のいい収納を実現しました。
リビングからは死角になるキッチン奥にオープンなパントリーを実現
ウッドデッキへはリビングとダイニングのどちらからも出入りできます。このデッキがLDKに食い込むようなプランにしたことで、キッチンから使いやすい位置にありながら、リビングやダイニングからは見えない絶妙なパントリースペースが生まれました。
事例4.充実した「おひとりさま」ライフを支える、軽やかでおしゃれなキッチン
洗い出しの広い玄関土間からリビング、そしてキッチンを見る
こちらは一人で暮らす時間を楽しむ平屋の家です。延床面積は23.04坪とコンパクト。玄関を入ると、趣味の自転車が置かれた広い洗い出しの土間(写真・手前)が。
ここに置かれた愛車を、仕切りのないリビングから、眺めることができます。そして、リビングの大きな木製サッシを引き込めば、外の景色を独り占めできる、贅沢な空間!
カウンターキッチンでダイニングが不要になり、リビングが広々!
「お客様からは、自分一人なのでダイニングテーブルを置くスペースは要らないとのことでした。そこで、キッチンの奥行きを900mmにして、カウンターを設けました」
カウンターにハイスツールを置くことで、食事の時間も快適です。
ゆったりとした気分で過ごせる、キッチンからの眺め
キッチンは「キッチン・キット」をベースにしたアイランドキッチンに。幅(W)2100mmの中に、シンクとIHコンロを配置しています。シンクは、洗剤のボトルやスポンジも収納できるポケット付きEシンクに。ワークトップはいつもすっきり。
好きなものに囲まれて、心地よく暮らせる家ができました。
住まい手のためになる「当たり前」を模索し、デザインと性能に妥協しない住まいをつくり続けてきた大幸住宅可児工房。かつて4人だったスタッフは25名に増え、今では年間40棟を手がける工務店へと成長を遂げました。
「実はこの会社は、可児市に根付いていい家を建てようと、大幸住宅という会社から分かれて生まれた会社なんです。あの時と同じように、今、また新たな工房を生み出す時期に来ているのかもしれない、と」
20代で門をたたいた設計士も、10年経てば脂ののった30代になる。しかし、ひとつの組織のままでは、変わらず先輩がいます。ポストにも限りがあり、一人ひとりの成長や人生の可能性を狭めてしまうのではないか。畑佐社長の胸には、そんな社員を想う切実な問いがありました。
「その解決策として、地域に根付く工房を10個つくるのが私の目標です。新しい場所で、違うステージで人生を切り開いていく。それが社員の成長や、ここで働いたことの本当の価値につながっていくと思っています」
家づくりを通して、住まい手の人生を豊かにしてきた大幸住宅可児工房。これからは、ともに汗を流してきた仲間の人生をも輝かせるための挑戦が始まります。新たな場所で、その種がどんな美しい暮らしを育んでいくのかも楽しみです。
株式会社 大幸住宅可児工房
「五感を豊かにする家づくり」をコンセプトに、「居心地」と「暮らし心地」が共存する住まいを設計・施工する工務店。深い軒で日射をコントロールし、大きな窓から室内に風を呼び込むデザインが人気を集めている。性能面でも耐震等級は、最高の「3」、断熱性能等級は5以上に。長期優良住宅を全棟標準取得している。主な施工エリアは、岐阜県可児市およびその周辺地域。
〒509-0203 岐阜県可児市下恵土3433番地652
℡:0574-60-1161
HP: https://www.daiko-kani.com/