クレソン一級建築士事務所(後編)
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々28〉
「人生が豊かになる、心地よい〝居場所〟をつくる建築家」(後編)
クレソン一級建築士事務所 大内 萌さん
大内さんと「キッチン・キット」でつくったお気に入りのキッチン
引き続き、静岡県三島市を拠点に活躍するクレソン一級建築士事務所・大内萌さんのご自宅をご紹介します。
前編では、川に面した細長い敷地の魅力を最大限に活かし、延床面積85㎡の中にカフェ・アトリエ・住居という3つの空間を伸びやかに内包したプランをご紹介しました。
後編となる今回は、大内さんが家づくりで最も大切にしたという「食べること」に関わるゾーンにスポットを当てます。
ekrea Partsの「キッチン・キット」を採用し、美しく仕上がったこだわりのキッチンも詳しくレポートします 。
キッチンとダイニングは、いちばん気持ちのいい場所に配置
ロフトから見たキッチンとダイニングの全景
大内さんは夫とプランを詰めていく過程で、「食べること」がいちばん大事、という結論に至りました。
「もっと正確に言うと、料理をしながらお酒を飲む時間が好き。娘も私たちに似て、食べ物への執着が強いんです(笑)」(大内さん、以下同)
そこで、川の水面が見える、いちばん気持ちのいい場所に、キッチンとダイニングを配置することに決定。
「料理をしながらお酒を飲み、会話を楽しんだり、川を眺めながら朝ごはんを食べたり…そんな日常の風景を思い浮かべながら、設計を進めました」
キッチンとダイニングは源兵衛川を眺める特等席
延床面積85㎡と限られた空間。おまけにカフェを併設し、仕事場(アトリエ)もつくるとなると、キッチンやダイニングに大きな面積はさけません。
そこで、キッチンは壁付けに。ダイニングテーブルはキッチンに近づけて、作業台としても使えるようにプランしました。
「キッチン・キット」のI型とキャビネットを壁に付けて横並びに
キッチンとダイニングの幅は、手が届く860mmに
キッチンで悩むのが冷蔵庫の位置。使いやすい場所に置きたいものの、目立つ場所だと生活感が出てしまいます。
「冷蔵庫は、タイルの壁を設け、見えないようにしました。暮らし始めてわかったのですが、このタイルの壁の赤茶色と窓の外の緑が、ワークトップに映り込んで、ステンレスの金属の質感を和らげてくれるんです。それに見付(前垂れの厚み)が20mmと薄いので、シャープで軽やかな印象になりました」
キッチン部分は、アトリエと同じ塩ビタイルを敷き、ダイニングとリビングのスペースは、床を一段上げて緩やかに仕切っています。仕事をしているアトリエからの動線もスムーズです。 キッチンとダイニングテーブルの間も、あえて狭めのW860mmに。
「この幅だと、食事しているときに立ち上がらなくても冷蔵庫から飲み物を出したり、キッチンの引き出しからサッと道具を取り出したりできるんですよ」
DIYで貼った赤茶色のタイルと、扉に張ったラワン合板の相性も抜群
キッチン本体は、キッチン・キットI型(W2400mm×D650mm)と、キャビネット(W1540mm×D650mm)を横並びに。合計でW3940mmの長いキッチンになりました。
「料理好きで背の高い夫に合わせて、高さは900mmにしました。ボックス内と巾木(はばき)は、オプションでチャコールグレーに変更したのも正解でした」
置き場所に困るゴミ箱はシンク下へ。チャコールグレーの巾木とゴミ箱が馴染み、いい雰囲気を作り出しています。
シンクはポケット付き「Eシンク」を選択
シンクには、四隅を10R(半径10mmの丸み)にしたことで、シャープなスクエア形状でありながらもお手入れがラクな「Eシンク」を採用。W760mmとゆったりしたサイズで、大きめの鍋やフライパンもラクに洗えます。
「広いシンクの隅の汚れをサッと洗い流せるように、シャワー水栓は絶対条件でした。これで、いつもきれいな状態をキープできます」
910mmピッチの(構造の)加工部分には棚を取り付け、コーヒーやお茶のセットなど、見せていいものを収納しています。
幅の広いキッチンにしたことで収納力も抜群!
コンロ下はお玉やフライ返し、鍋の収納スペースに
大内さんのキッチンには、パントリーと食器棚がありません。
「パントリーに関しては、最後まで悩みました。でも、約4mと長いキッチンなので、キッチン下に収まっています」
「許可をいただき、キッチン下の収納も見せていただきました。
まずは、コンロ下。ここは引き出しの内部が2段になっていて、上部にはお玉やフライ返しなど調理道具が。そして、その下に鍋やフライパンが、すっきりと収納されています。
コンロ横の引き出し収納も、一目で中身がわかる
コンロ横、上の引き出しには、包丁やピーラーなどを収納。そして、その下にはボウル類や調味料の定位置に。
いちばん端の引き出しは食器棚とパントリー代わりに
「いちばん端の引き出しは、上は食器収納、下は、食品のストックに使っています。パントリーも食器棚もありませんが、まったく問題はありません」
「食べること」を大切に、豊かな時間を紡いでいく家ができた
パーティーの準備をしている大内さんご夫妻
住み始めてまだ2か月。大内さんは、実現したかった「食べることを大事にする暮らし」「隣り合ってそれぞれが心地よく過ごす生活」を満喫しています。
「家づくりをしていた時間は、働き方や、これからの人生でどういうことに時間を使っていきたいか、ということを整理する時間だったと思います。この家に住んでから朝早く起きるようになりましたし、生活が変わりました。こういう変化を、これからも楽しんでいきたいと思っています」
きっとこれからも、ekrea Partsの「キッチン・キット」でつくったキッチンとともに、ご家族の豊かな時間を紡いでいくことでしょう。
窓の外を流れる源兵衛川のように、ゆったりと確かな幸せが満ちていく。そんな令和版『人生フルーツ』の物語が、今、始まろうとしています。
クレソン一級建築士事務所
大内萌氏が代表を務める一級建築士事務所。三島市の清流・源兵衛川のほとりに拠点を構え、この川に自生するクレソンのように、地域に深く根ざし、暮らしを豊かにする住まいづくりを行っている。手がける住宅や店舗は、単なる機能的な空間にとどまらず、住まう人や訪れる人がホッと一息つける「居場所」を生み出す設計に定評がある。敷地の個性を活かした丁寧な空間提案は地域からの信頼も厚い。設計の相談は広く全国から受け付けている。
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