空間社(後編)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々19〉
「リノベーションの力で、使いやすくて居心地のよい家に(後編)」
株式会社 空間社 代表取締役 宮本泰則さん

引き渡しを直前に控えたマンションの内観

前回、宮本代表に空間社のリノベーションへの想い、キッチンや収納を造作する理由を伺いました。その数日後、引き渡し前のマンションリノベの取材が可能に。場所は東京の浅草です。

施主の要望に応えて、ごく普通の延床面積60㎡台3LDKの間取りが、プランも仕上げも大変身。ヒアリングで明らかになった要望と丁寧に向き合い、答えが導き出されていました。

空間社だからできた、満足度の高いマンションリノベ。詳しくレポートします。

前編はこちら

今回の物件は築26年、延床面積60㎡台のマンション

フルリノベで実現した明るく開放感のあるLDK

訪れたのは、観光客で賑わう浅草の中心地。浅草寺からもほど近い、築26年、延床面積67.3㎡のマンションです。

「施主は、ヨーロッパ出身のご夫婦。日本の文化に触れるのが好きで、このマンションも窓から、浅草寺の五重塔が見えることが気に入り、購入の決め手のひとつとなりました」(設計担当の喜早奈帆さん、以下同)

窓から見える浅草寺の五重塔

「自分たちが気に入った暮らしができそうな事例を、空間社のホームページで見つけてご連絡くださいました。ご夫婦は日本語が流暢で、打ち合わせやメールのやり取りもスムーズでした」

連絡を受け、喜早さんは施工責任者と現地でお二人に会うことに。

当時の間取りは、セミクローズのキッチンと3つの個室がある3LDK。キッチンは暗めで、リビング・ダイニングも窮屈なプランでした。

まずは相談者の要望を細かくヒアリング

現調時に持っていた事例集を真剣に見ているお二人

さっそくヒアリング開始すると、ご主人から様々な要望がありました。特に強かった要望は、以下の4つです。

1.リビングからもベッドルームからも浅草寺の五重塔を眺める暮らしがしたい
2.パンをつくるのが好き。在宅ワークが多いので、パンが焼ける経過を眺めながら、好きなグリーンに囲まれて仕事がしたい
3.音楽も好きなので、ギターやピアノを弾いたり、お気に入りのレコードを楽しんだりしたい
4. 日本らしさを感じられる素材を取り入れたい

言葉の端々に、「好きな物に囲まれて、楽しく暮らしたい!」という希望にあふれていました。

キッチンをLDに取り込み、開放感あふれるプランを提案

リノベーション前と後のプラン

喜早さんは、要望を持ち帰り、さっそくプランを作成。東側にあった部屋をリビングに取り込み、セミクローズのキッチンをオープンな対面キッチンに。LDKの面積を最大限にとり、浅草寺の五重塔を生活の中心となるように考えたプランです。

開放的なプランを見たお二人は、とても気に入り、契約に至りました。

リノベ後、図面の上の写真と同じ位置から撮った写真

ここからは、お二人の要望にどのように応えたかを、ご紹介していきましょう。

玄関ホールからLDKを見る(右)、寝室側から洗面・玄関ホールを見る(左)

喜早さんはまず、扉を極力なくし、広がりのある空間にしようと考えました。実際、扉があるのはトイレと寝室だけ。洗面にもLDKの入り口にもありません。

「事例写真を見て、モルタルの質感が好みとおっしゃっていたので、思いきって玄関ホールからキッチンがひと続きの土間空間に見えるように、塩ビタイルのなかでも質感のある、モルタライクをご提案しました」

LDKの掃き出し窓

「リビングとダイニングの床は、無垢の木床に。ラスティック(素朴)な雰囲気が好みの施主に、節ありのフレンチオークの無垢材をご提案しました。スリッパは履かないとお聞きしたので、風合いだけでなく足触りのよさも感じていただけると思います」

LDKの掃き出し窓付近に貼ったテラスタイル

日中は安定した光が差し込む窓の近くには、テラスタイルを貼っています。この場所は?

「好きなグリーンに囲まれて暮らしたいというご要望があって…、それなら、リビングに広がるインナーテラスをつくるのはどうかと。浅草寺の朱の色をどこかに入れたいというご要望もあったので、テラスタイルとして採用しました」

日本の文化に触れるのが好きなお二人には、素材の質感にもこだわりが。このタイルを選ぶときも、様々な表情のものを検討したそうです。結果、お二人とも大満足!

玄関ホールから見たLDK。正面の窓辺に沿ってテラスタイルを貼った

入居後は、窓辺にはグリーンが、その間には電子ピアノが置かれる予定です。そして、その横には、レコードをディスプレイするシェルフと、在宅ワーク用のテーブルが。

グリーンと音楽を楽しみながら在宅ワークができる、お気に入りの場所が生まれました。

ベッドルームにあるクローゼットの障子

日本らしさを感じられる素材を取り入れたいという要望は、各所に。

ベッドルームのクローゼットは扉ではなく障子に。クローゼット内部に間接照明を入れたことで、行灯(あんどん)のような雰囲気を楽しめます。

キッチンには空間社オリジナルキッチンを採用

リビングからキッチンを見たところ

キッチンはekrea Parts「キッチン・キット」をベースにした、空間社オリジナルキッチンを採用。

配管のルートを確保するために、腰壁を設けました。モールテックスで仕上げた腰壁は、床に使用したモルタライクと質感の違いが楽しめます。空間にも馴染むので圧迫感が出ず、空間を緩やかに仕切っています。

キッチンとカップボードは、空間社オリジナルのステンレス扉の仕様に

以前はW2100mmだったキッチンはW2400mmに。シンクとコンロの間を広げたことで、広々とした作業スペースが生まれました。趣味のパン作りもゆったり楽しめます。

ステンレスとモールテックスの落ち着いた空間

お二人で作業しやすいよう、通路幅は広めに設計しています。そして、壁側にはキッチンと同じ面材、取っ手を使用したカップボードを設置。お気に入りの本格的なベーカリーオーブンを置くスペースもできました。

コンロ脇の壁にも和のテイストが

このキッチンにも、日本らしさを感じられる素材が散りばめられています。

「コンロ横の壁は、上品なアクセントになるよう、二枚掛けのヘリンボーン貼りをご提案しました。帯のようにも見えませんか?」

キッチンのペンダント照明

キッチンのペンダント照明には「オリガミ」という商品を採用。

「見た目も名前からも日本らしさを感じられ、ネイビー、グレー、ターコイズの3色異なる色を取り入れたことで、空間にユーモアが加わりました」

想定外の問題も知恵を絞り解決

キッチンはH900mmと通常より高くした

お二人とも背が高く、今までのキッチンでは低くて作業がしづらいという悩みがありました。 そこで、キッチンの高さは900mmに。しかし、その場合、巾木部分を上げることになり、足元の化粧板が目立ってしまいます。

キッチンの扉部分にも工夫が

そこで、喜早さんは弊社と打ち合わせを重ね、扉材の下の部分を100mm伸ばすことにしました。H900mmにすると、巾木の高さは150mmになります。この巾木が、扉の下部を100mm伸ばしたことで、ほとんど気にならなくなりました。

しかし、食洗機はフルオープンタイプ。開閉の都合で扉材の高さに制限が出てしまいます。そうすると、引き出し扉と下部のラインを揃えることができません。

「そこは、ekrea Partsさんのご提案で、扉とは別で、下部ラインが揃うように幕板を取り付けたことで解決できました」

空間社の喜早さん

完成後、確認に訪れたお二人は、「厨房みたいでカッコいいね!」と大喜び。素晴らしいリノベーションがまた一つ生まれました。

細かくヒアリングし、施主の要望に応える。仕上げや造作の工夫で、快適で使いやすい家にする。その思いが凝縮されて住まい。今回、この家を拝見したことで、空間社が支持されている理由が、よく分かった気がします。

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