空間社(前編)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々19〉
「リノベーションの力で、使いやすくて居心地のよい家に(前編)」
株式会社 空間社 代表取締役 宮本泰則さん

空間社代表の宮本泰則さん(事務所にて)

今回は、東京の城南エリアや神奈川県東部を中心に活動する、評判のリノベ会社「空間社」を2回に分けてご紹介します。

代表の宮本泰則さんは、まだリノベという言葉があまり知られていなかった2007年に、前代表と会社を設立。以来、年約30件、累計500件以上のリノベーションを手掛けてきました。

同社は、少人数の会社であることのメリットを活かし、設計と施工の担当者が、最初の打ち合わせから引き渡しまで一貫して対応。細かくヒアリングし、その内容を現場と密に共有することで、より満足度の高いリノベーションを実現しています。

前編では、宮本代表にリノベーションと造作へのこだわりについてインタビュー。後編では、徹底したヒアリング力によって施主の要望を細部まで実現した、最新事例をレポートします。

リノベという選択肢を根付かせた、フロントランナー

住宅街の一角にある空間社のオフィス

空間社は、世田谷区の閑静な住宅街にあります。まだ、リノベーションという言葉が定着していなかった18年前に、この場所で創業。以来、リフォームとは違う、リノベーションの魅力を発信し続けています。

「私を含めスタッフは8名。この人数で、設計、施工管理のほか、中古マンションの購入から検討している相談者との同行内覧なども行っています」(宮本さん、以下同)

年間に手掛けるリノベーションは約30件。その内訳はマンションリノベが7割、戸建てリノベが3割だそう。また、7割を占めるマンションは、住んでいるマンションをリノベするケースと、中古マンションを購入してリノベするケースがほぼ半々だと言います。

「同行内覧では、検討中の中古マンションの安全性だけでなく、希望するリノベが可能かも調べます」 

マンションリノベの場合、壁式構造や床スラブ下配管など構造上の理由から、大きな制約を受けることがあります。ですから、プロが同行し的確なアドバイスを受けられることは大きな魅力です。

少人数の会社だからできる、引き渡しまで専任の設計・施工

映像関係の仕事をしているご主人が、家族全員がもっと快適に過ごせる場所を作りたいという
思いから中古マンションを購入、リノベーションした事例『LUME』

大きな会社だと、最初の窓口、設計の担当者と担当が代わり、現場がスタートすると、また担当が代わるというケースも。

しかし、空間社の場合、ファーストプランの提案から設計、施工、引き渡しまで、同一の担当者が責任を持って進めていく、専任制を採用しています。

「単純に設計担当者が最後まで寄り添うのではなくて、設計担当者と施工責任者、2人で打ち合わせに出て、設計的な意見に施工的な意見も交えながら、打ち合わせをするんです。だから、どちらかに偏りすぎることもありません。また、現場が始まって、〝これどうやって作るんだよ!〟〝こんなんじゃできないよ!〟などということは、絶対に起きない(笑)」

『LUME』の場合、壁式構造のマンションだったので、ダイニングとキッチンの間の壁は
取れなかったが、天井表しにしたことで、開放感のある空間になった

逆に、施工のことを気にして図面を描いたところ、現場で「もう少しいける」と、いい方向での変更もあるそうです。これも設計・施工ダブルの専任制のメリットと言えそうです。

「そして、施工チームは会社設立から長年一緒にやってくれている職人さんたちです。私たちが届けたいものを分かってくれているので、〝○○の部分は○○邸の感じで〟で伝わることも。おかげで施工のクオリティが維持できています」

デザインは当たり前。提案したいのは「使いやすい家」

空間社のホームページで公開されているWORKS(施工事例)

空間社のホームページを見ると、豊富な施工事例に驚かされます。この原稿を書いている2025年末の段階でその数119事例。それぞれの家族が、要望を実現でき満足している様子がうかがえる写真と、リノベの詳細が分かるテキストが添えられています。

11軒、住む家族も家の広さも違うのに、それぞれに満足度の高いリノベを実現できるのか、宮本さんに聞きました。

『LUME』は、「表面的な印象よりも、素材そのものから醸し出される雰囲気が好き」
というご夫婦のご希望を優先し、床材には複合フローリングの浮造りのものを採用。
これにより、家全体に温かみのある自然な雰囲気が生まれた

「まず、コミュニケーションをしっかりとります。ヒアリングも細かいですよ(笑)。例えばキッチンを作るときも、ある程度持ち物、食器の量とか、調理機器の量とか、その辺をお伺いしながら、どんなしまい方をするかだとか、だったらこういう形の方がいいですねとか、ゴミはどういうペースで捨てますか?とか」

事前にアンケートを取る会社もありますが、それでは決まりきったQ&Aになってしまうと宮本さんは言います。

「会話の中でコミュニケーションをとった方が、本質のところに行ける気がするんです。包み隠さずさらけ出してくださることで、より良い提案ができると思っています」

そして、深いところまで聞き取ったところで、プランの提案。そこでいちばん大事にしているキーワードは〝使いやすさ〟だそう。

「私たちが心がけているのは〝使いやすい家〟です。だから、カッコいいけどメンテナンス性のよくないものは、そのリスクも説明して、だったら、こっちの方がメンテナンスしやすいし、きれいに保ちやすいですよと伝えます」

『LUME』の引き渡し後、「休日はどこへも行かず、庭に電飾をつけて外でご飯を食べたり、野菜を植えたり、
家族や友人を家に招いて旅行気分を満喫したり。夜子どもが寝静まったあとに、リビングで観る映画も格別です。
家がかわると本当に生活が豊かになりますね。」と担当者へうれしいメッセージが届いた

細かくヒアリングし、その要望に応え、使いやすい家を実現するには、造作が大事なキーワードに。 

「動線や使い勝手を考えると、その家に合ったものということになります。結果、キッチンや洗面台、収納家具などは、ほぼ造作しています」

 

ここからは、ekrea Partsの商品も採用いただいた、使い勝手とデザイン性を兼ね備えた空間社オリジナルのキッチンをご紹介しましょう。

ekrea Partsとのコラボで生まれたステンレス扉のキッチンが根強い人気

『LUME』でもステンレス扉の空間社オリジナルキッチンを採用

写真は今まで記事の中でも紹介してきたリノベ事例:『LUME』のキッチンです。実はこのキッチン、ekrea Partsのキッチン・キットを採用して生まれた空間社オリジナルキッチンです。

「ステンレスのキッチンは一定の人気があり、ステンレス扉材の用意もあるので、大工工事で設置できます。それにオーダーキッチンのように、施主の使い方に合わせて収納の並びを変えられるのもいいなと思っています」

まさに、宮本さんがいつも念頭に置いている、「使いやすい家」にかなったキッチン!

『NOBI』。ダイニングからリビング、ワークスペースを見たところ

こちらは、築47年、延床面積63.9㎡のマンションを購入したご夫婦プラス愛犬1匹の住まいです。

要望は、夫婦ふたり分のデスクが並ぶ快適なワークスペースを作ること、愛犬のび君と暮らしやすい住環境をつくることの2つ。

年数が深く建物自体が壁式構造のため、制限がありながらもリビングダイニングとワークスペースの間は、可能な限り開口部を広げ、ひとつながりの空間にしました。

『NOBI』。リビングからワークスペースとキッチンを見る

LDと、キッチンとの間にも構造上抜けない壁があります。

 
    

『NOBI』のキッチン

こちらの事例では、空間社オリジナルのI型キッチン(W2400mm×D650mm)を採用。ステンレスの扉には、コーティング加工が施されているので、指紋や汚れが目立つこともありません。

 
    

『carrousel』のLDK。キッチンは対面のペニンシュラ型に

3件目の事例は、築38年、延床面積106.3㎡のマンションを購入した、ご夫婦と幼いお子さん1人の3人家族の住まいです。

4LDKを2LDKに変更することで、29帖もの広いLDKを確保しました。

 
    

『carrousel』。ダイニング側からキッチンを見る。ブルーのドアの向こうは玄関

以前はセミオープンだったキッチンは、周囲の壁を取り壊して新しくオープンタイプキッチンに変更。

両側から作業しやすいように天板の奥行きは深めに。床にはキッチンを囲むように清掃性のいい大判タイルを貼りました。

 
    

『carrousel』のキッチンの両面

キッチンの腰壁には、ご夫婦が選んだ大判のタイルを貼りました。キッチン側に回ると、ステンレスの扉の空間社オリジナルキッチンが現れます。

大判のタイル、ステンレスのキッチン、ゴールドの取っ手…お気に入りを詰め込んだキッチンが完成。造作することで実現できたキッチンです。


ここまで空間社が提案するリノベへの想い、造作のこだわりをご紹介してきました。次回は、実際に細かくヒアリングしたことで、施主も大満足の事例をご紹介します。

後編に続く

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