伴工務店
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々31〉
「確かな素材と性能を掛け合わせ、その先にある暮らしの豊かさを提案」
有限会社 伴工務店 代表取締役 伴 栄樹さん
伴工務店 代表取締役・伴 栄樹さん
今回は、栃木県宇都宮市を拠点にする「伴工務店」が手がけたお宅に伺いました。同社は、自社設計によるきめ細かな提案力と、確かな施工力で信頼が厚い工務店です。
代表の伴 栄樹さんは、創業した父の跡を継いだ二代目社長。建築家による設計塾などで設計力を磨き、社内に設計室を設立。良い素材にこだわり、熟練の自社大工の手で、意匠と性能を両立させた、長く快適に暮らせる家をつくり続けています。
優れた断熱気密性能に守られた、敷地の高低差を巧みに生かす大らかな空間。その心地よい住まいの魅力とともに、空間に美しく溶け込むekrea Partsの「キッチン・キット」を採用した、こだわりのキッチンをレポートします。
現場で木造住宅の技術を学び、デザインと性能を兼ね備えた家をつくる
今回伺ったY邸の玄関。造作カウンターは下駄箱以外にも書斎、洗面としても利用
伴工務店の設立は1982年。創業52年の地域工務店です。
「小学校から高校までは、ずっと野球漬けの毎日でした。それが終わったとき、長男だし、いずれは家業を継ぐことになるだろうと考えて建築の専門学校へ進みました。卒業後は地元の設計事務所に9年間勤め、30歳の時に伴工務店に入りました」(伴さん)
それまで設計事務所で携わってきたのは、鉄骨造やRC(鉄筋コンクリート)造の公共建築など。木造住宅のノウハウは、現場で自社の大工や出入りの職人から一から学んだと言います。
現場で施工の基礎を叩き込まれた伴さんは、その後、設計力を磨くために、研修や勉強会など、学びの場に積極的に参加します。さらに「新住協(新木造住宅技術研究協議会)」に加盟。同業者との情報交換を重ね、住宅性能の知識を深く追求していきました。
それから25年。今では社内に設計室を設け、意匠にも性能にもこだわり抜く工務店として、地元でも高い評価を得ています。
「家をつくるのが楽しくなってきたのは、実はつい最近のことなんです。私が会社に入った当時は、お客様の予算に合わせて、既製品のフローリングやクロスを使ってつくるのが当たり前でした。でも、私はどこかで『伴工務店らしい家をつくりたい』と、ずっと思っていて。 やはり、地元の木を使い、塗り壁などの自然素材で仕上げ、大工が家具を造作したりしないとダメだよねって。そうした、自分が本当に理想とする家づくりがやっと形にできるようになったのがここ10年ほど。ようやく今、家づくりが楽しくなってきました」(伴さん)
伴工務店の強みは設計と施工が一体となって家づくりをすること
ダイニングの壁に切り取られた窓は、まさに「一枚の絵」
伴さんには心に決めた、家づくりの約束事があります。
・構造材には栃木県産の木材(やみぞ杉)を使う
・新建材は使わず、無垢材と自然素材で仕上げる
・性能は耐震等級3、断熱等級6以上、気密性能(C値)0.5以下
「栃木県ならではの家づくりを考えたときに、まず思い浮かんだのが地元の杉でした。とても良質ですし、使わなければ森林の循環は進みません。また、壁は土壁で仕上げることで、室内を快適に保ってくれます。風土に合う素材が良いですよね」(伴さん)
また性能面では、現場の大工が気密測定に立ち会うことで、住宅性能に対する知識や意欲が高まったと言います。
「一緒になって性能や数値にこだわって仕事をしています。設計と施工が一体となって家づくりをしているのが、うちの強みかも知れません。住宅は図面だけでは完成せず、現場での判断や職人さんとのコミュニケーションで仕上がりが大きく変わります」(伴さん)
では、さっそく伴工務店が手がけた住宅をご紹介しましょう。
土地の高低差を活かした提案と施工力で伴工務店に
Y邸の吹き抜けのリビングとダイニング・キッチン
お伺いしたお宅は、50代のご夫婦が暮らす週末住宅です。
「ずっと東京暮らしでしたが、都会の忙しさに少し疲れ、いずれは別の場所でのんびり暮らしたいと夫婦で話していました。その後、夫の実家にも近いこの場所で土地を探すことにしたんです」 (奥さま)
そうして出会ったのが、東西に長く、2段の高低差がある敷地。日当たりが良いことに加え、前面の道路からは擁壁で約2メートル高くなっているため、目の前の車の行き来が気になりません。水田が広がり、その先には週末に蒸気機関車が走る線路が見える――この抜群のロケーションが、購入の決め手になりました。
Yさんが伴さんに渡したプランの要望図
ご主人は、確かな施工力が求められる高気密高断熱は大前提。さらに、仕事の関係で知ったドイツ・Sto社の外断熱システムを採用し、外断熱の家を建てたいと考えていました。
そこで、このシステムで施工できる会社を探し、プランの要望を図(写真)にして提案を依頼。
リビングは玄関、テラス、ダイニング・キッチン、寝室、そして奥さまの仕事場であるアトリエ(Co-working)ともつながっている。そのアトリエと寝室からは、水田の先を走る電車を眺めることができる…。まるで難解なパズルのような図です。
「この図を読み取って、伴さんだけが、土地の高低差を活かしたプランを出してくれました。これしかないな!と思いましたね」(ご主人)
Yさんが基本プランをもとにつくった模型
こちらは基本設計をもとに、ご主人がつくった模型です。
2階部分に玄関とアトリエ、ゲストルームを配置。階段を降りるとLDKと寝室、水回りがあるプラン。
アトリエは、リビングにある吹き抜けを介して、ゆるやかにつながっています。まさに要望通り。高低差を活かした「平屋」のようなプランです。
室内は自然素材に包まれ、高断熱高気密で夏も冬も快適に過ごせる家
1階部分はLDKと寝室が引き戸でつながる、ワンルームのような空間
写真は、2階玄関ホールからLDKへ下りる階段から見た風景です。広く見えますが、延床面積は28.7坪。外の景色を取り込み、敷地の段差を活かすことで、豊かな空間が生まれました。
床はカバザクラの無垢フローリング、壁は珪藻土と漆喰、卵の殻を混ぜた土壁。梁や柱は地元・栃木県産のやみぞ杉。
伴さんが選ぶ、こだわりの自然素材に包まれ、深呼吸したくなるような、気持ちのいい空間です。
高低差のある敷地の形状に沿って階段を下りLDKへ
「小高い丘に、そっと腰を下ろすような佇まいをイメージして設計しました。高低差を活かすことで、アトリエと居住空間をつなぐ開放的な吹き抜けも生まれました」(伴さん)
上部の壁の後ろにアトリエを配置。茶色い扉の奥は水回り
吹き抜けのある家は、光熱費がかかるという話をよく耳にします。しかし、それは、家の性能次第。
こちらの家は、断熱性能を表すUA値は0.32W/㎡・K (5地域 / 等級6)、気密性を表すC値は、驚異の0.1c㎡/㎡。寒い冬でもエアコン1台で快適に過ごせます。夜暖房を消して朝起きても、まったく寒さを感じないレベル。
光熱費は最小限で、夏も冬も、家のどこで過ごしていても、心地よく暮らせます。
空間に優しく馴染む、ekrea Parts「キッチン・キット」のキッチン
リビング側からダイニング・キッチンを見る
吹き抜けのリビングの隣には、天井高を抑えたダイニングとキッチンがあります。
1階全体が見渡せるキッチンからは、外の長閑な景色も一望できる
ダイニング側の天井にアールを付けることで、光がまんべんなく広がる工夫を凝らしました。そしてキッチン部分は、天井高をさらに抑えて2100mmに。
天井の高さを変えることで、LDKをゆるやかにゾーニングしつつ、暮らしの居場所を設けています。
キッチンに立つYさんご夫妻
キッチンはⅡ型プランに。対面部分には、キッチン・キットの「Ⅱ型キッチン(シンク部)」(W2250mm×D900mm)、壁側には「Ⅱ型キッチン(コンロ部)」(W2250mm×D650mm)を採用しました。
「今住んでいるマンションのキッチンが、長い壁付けタイプなんです。ふたりで作業していると、ぶつかってしまうことが多くて…。ふたりでも作業しやすいⅡ型キッチンを希望しました」(奥さま)
キッチンの通路も広めに設計
通路の幅は、ふたりが重なってもぶつからない1100mmに。
「この幅にして正解でした。シンク側の奥行きを900mmにしたので、作業台としても広く使えるのも満足しています。食洗機から出したカップやグラスをここに置けば、リビング収納にしまうのもラクですよ」(ご主人)
ダイニング側から見たキッチン
リビング収納の扉は、造作した吊戸棚と合わせてシナ合板に。無垢の木床のリビング・ダイニングの空間にも馴染みます。
シンク側(対面側)の収納
一方、通路側の扉には、汚れても掃除しやすいメラミン材を採用。床には、テラコッタ調のタイルを貼りました。
シンクは、洗剤のボトルやスポンジが置けるポケット付きEシンクに。シンクの下には、調理でよく使うカゴやボウル、包丁などの収納スペースに。勝手口側には、カトラリー類を収納しています。
コンロ側(壁側)の収納
一方、壁側のコンロの下には鍋やフライパン、調理道具を収納。調理の準備も、調味料もゼロ歩で取り出せる、便利な収納になりました。
キッチンからリビング方向を見る
取材を終えて、伴さんにこれからの目標を伺いました。
「性能やデザインに日々精進するのはもちろん、その先にある『暮らしの豊かさ』を提案できる工務店でありたい。家は、住まい手の暮らしが始まってからが本当のスタートです。だからこそ、時間とともに愛着が深まり、住むほどに好きになれる住まいをつくっていきたいと思っています」(伴さん)
Yさんご夫婦がこの家での暮らしを始めて、まだ3か月。この美しい住まいで、これからどんな豊かな時間が紡がれ、どんな物語が始まっていくのか。これからの日々が、今からとても楽しみです。
有限会社 伴工務店
自社設計によるきめ細かな提案力と、熟練の自社大工を擁する確かな施工力を併せ持つ工務店。建築家からの信頼も厚く、施工依頼も多い。「良い素材を使って家をつくる」という理念のもと、栃木の気候風土に合わせた高い住宅性能に加え、木の温もりを活かした手仕事の光る家づくりを得意としている。主な施工エリアは、宇都宮市を中心とした栃木県内。
〒321-0347栃木県宇都宮市飯田町481
℡:028-648-7326
HP:https://www.ban-k.jp/