カワムラアーキテクツ
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々27〉
「深く耳を傾け、住まい手の人生を引き立てる『器』をつくる建築家」
株式会社カワムラアーキテクツ一級建築士事務所 川村 浩二さん
アトリエのある「美浜のコートハウス」の前で
今回ご紹介するのは、千葉県を中心に活動するカワムラアーキテクツの川村浩二さんです。
川村さんが目指しているのは、「住まい手の人生を引き立てる、最高の背景となる家」。歳月とともに深みを増していく「器」のような住まいを追求する川村さんの設計には、素材本来の美しさと手仕事の温もりが息づいています。
自宅兼アトリエ「美浜のコートハウス」に伺い、建築家としての想いと造作へのこだわりをインタビュー。ekrea Partsの「キッチン・キット」を採用した最新事例とともに、その空間づくりの妙をレポートします。
建築家への原点は、父との美術館巡り
アトリエの壁に掛けられた、亡き父が模写したセザンヌの絵
川村さんは、東京理科大学を卒業後、複数の設計事務所で経験を積み、38歳で独立。カワムラアーキテクツを設立して、今年で12年を迎えます。
「子どもの頃、父が美術館によく連れて行ってくれたこともあり、アートや音楽といった文化的なものに面白さを感じていました。そこで、理系のなかでも芸術的な要素が強い建築学科に進みました」
それまで住宅に対して「間取り」という記号的なイメージしか持っていなかった川村さんですが、大学の授業で、光や風、緑をどう取り込むかといった空間のあり方を学び、「こういう世界もあるんだ!」と衝撃を受けたと言います。
その後、海外の名建築を巡るなかで、建築設計を一生の仕事にすることを決意。卒業後は、都市建築を得意とする設計事務所、大型プロジェクトを手がける組織設計事務所で腕を磨いていきました。
住宅作家の事務所への転職が大きな転機に
模型を手にプランを説明する川村さん
川村さんは大型プロジェクトにやりがいを感じつつも、次第にある想いを抱き始めます。
「分業体制で一つのものを作り上げる仕事も楽しかったのですが、自分一人ですべての工程に携われる『住宅設計』を、もう一度しっかり学びたいという気持ちが強くなっていきました」
そこで、住宅作家として多くの作品を世に送り出している彦根明さんの事務所へ転職。
「彦根さんは、最初のスケッチを担当スタッフに任せてくれるんです。自ら描くことで深く思考し、彦根さんと対話(エスキース)を重ねる。そのプロセスが、私の設計力を大きく引き上げてくれました」
「美浜のコートハウス」のアール天井。優しく広がる反射光が、静謐な空間を生み出す
この日々を通じ、川村さんは設計技術以上に大切なことを学んだと言います。
「それは『人間力』です。いかに住まい手の人生に寄り添えるか。打ち合わせの際、彦根さんは自身の主張を押し付けるのではなく、まずは徹底的に耳を傾け、建築家としてどう応えられるかを深いところで考えていました。その真摯な姿勢を、私は間近で見てきました」
「美浜のコートハウス」の玄関ホール。降り注ぐ光と視線の抜けが心地よい
彦根さんの事務所で過ごした5年間、数多くの住宅設計に携わるなかで、住まい手の人生を包み込み、豊かにする「器」としての家づくりへの想いは、より確固たるものへと変わっていきました。
それでは、その想いが凝縮された自宅兼アトリエ「美浜のコートハウス」を詳しくご紹介しましょう。
街に溶け込み、いつも自然を身近に感じる二世帯コートハウス
「美浜のコートハウス」のファサード
「美浜のコートハウス」は、川村さんの妻の実家を建て替え。お母様と暮らすために建てた二世帯住宅です。塀は設けず、街並みと調和するようオープンに。4連の格子戸で、プライベートな中庭と見せる前庭を仕切っています。
柔らかな光に満ちあふれたキッチンとダイニング
「中庭に沿って玄関、LDK、和室を配置したコの字型のプランです。母は直射日光が苦手、でも庭いじりも楽しみたいと聞き、ファザードの壁で中庭の日差しを適度に遮りつつ、その奥にLDKを配置。キッチン→ダイニング→中庭という並びにしました。床材には、色の濃いチーク材を使用。ホタテ漆喰(チャフウォール)を塗った天井の隅をアールにすることで、室内も柔らかな光で満たされる空間になりました」
キッチンに立つと、ダイニングを介して中庭の緑が目に飛び込んでくる
こちらはお母様がお気に入りのキッチンからの眺め。季節の移ろいを感じる中庭、お茶室にもなる和室、食事の準備をしているときはダイニングで待つ家族とも会話を楽しめます。
中庭に沿ってデッキを巡らせた2階部分
近々、川村さんが家族(妻と娘2人)で移り住む予定の2階には、中庭に沿ってセカンドリビングと個室を配置。外にデッキを巡らせました。
市街地にありながら、四季折々の自然を身近に感じられる住まい。ここから、二つの世帯の豊かな時間が始まります。
造作にこだわり、最新事例ではキッチン・キットを採用
杉の無垢床と漆喰の塗り壁の空間と調和するキッチン
川村さんが大切にしているのは、視覚的な雑音を削ぎ落とした「ノイズのない空間」。そのための鍵を握るのが、ミリ単位で調整される「造作」の存在です。
既製品ではどうしても生じてしまう隙間や素材の違和感を、精緻な造作によって解消していくことで、住まい手の人生を美しく映し出す舞台が完成するのです。
その一例として、この春に完成したばかりの「ケヤキと共に暮らす家」のキッチンをご紹介しましょう。
タモの練り付けをまとったキッチン
キッチンはekrea Parts「キッチン・キット」(I型、W2700mm×D900mm)を採用。リビング収納の一部をオープンにして、パネルヒーターを置くスペースに。そして、扉材やサイドパネルには、木目が美しいタモの練り付け(突板)を張りました。
ノイズとなる取っ手は最小限に
タモの美しい木目と、エッジの効いたステンレス。ノイズを排したフラットなフォルムが、素材本来の持つ魅力を引き立てています。
:テーバー加工が施された手掛け
引き出し部分は、取っ手を付けず、上端を斜めにカットしたテーパー仕上げに。開けるときの木の感触がよく、閉めればフラットになるのは、造作ならでは。
フルオープンの食洗機やスライドストッカーも装備
食洗機や重いストッカーなど、機能上どうしても力が必要な場所にだけバーや取っ手を付け、それ以外をフラットに仕上げる。この「引き算の美学」が、フォルムの純粋さを際立たせています。
シンクには、シャープで清掃性にも優れているEシンクを採用
「住まい手は、キッチンの掃除のしやすさを非常に重視されていました。天板はステンレス、シンクは凹凸のないスクエアタイプをご希望。ekrea Partsのショールームでシャープな形状ながら四隅が10Rで掃除しやすい「Eシンク」をご覧になり、「まさにこれだ!」と即決されました。暮らし始めてからも、その使い心地に大変満足されています」
カップボードと吊戸棚もキッチン・キットをベースに造作
キッチンの背後には、キッチン・キットのステンレス天板のカップボード(W1690mm×D650mm)と、吊戸棚(W1690mm×D450mm×H700mm)を採用。
扉材は、キッチン本体と同じく、タモの練り付けを使用することで、まさにノイズのない美しいキッチンが生まれました。
株式会社カワムラアーキテクツ一級建築士事務所
千葉県千葉市を拠点に活動する建築設計事務所。代表の川村浩二氏は、「住まい手の人生を引き立てる、最高の背景となる家」を掲げ、住まい手の要望に深く耳を傾けながら、機能美と静謐さが共存する空間を提案している。その美しさは確かな「手仕事」の上に宿るとの考えから、ミリ単位の造作にも精通。おもな活動エリアは千葉県全域および東京都内。
〒261-0012 千葉県千葉市美浜区磯辺3-3-7
MAIL:info@kawamura-arch.com
HP:https://kawamura-arch.com