KEN建築工房(後編)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々26〉
「設計力と性能の知識を武器に、木の心地よい家を届ける大工集団」(後編)
株式会社KEN建築工房 代表取締役 田中健太さん

出来上がった図面をチェックする田中さん(事務所にて)

前回に引き続き、大阪府富田林市を拠点に活動する、地元で評判の工務店「KEN建築工房」の後編です。

前編では、田中社長が工務店を立ち上げた経緯や家づくり、大工の手仕事「造作」への想いを伺い、その結晶ともいえる2軒の施工事例をご紹介しました。

この後編では、「キッチン・キット」を活用し、大工工事でつくった住まい手の暮らしに寄り添う、3つのキッチンを詳しくレポートします。

前編はこちら

事例1.マンションリノベでかなえた「夫婦ふたりの時間を紡ぐキッチン」

マンションリノベーションで実現した木の温もりあふれるキッチン

KEN建築工房は、昨年6棟の新築と5棟のリノベーションを手がけました。

「最近はマンションリノベーションの依頼が増えています。こちらはその第1号物件。依頼をお受けしてから、建築家の小谷和也さんが提唱する『木のマンションリノベーション』の現場を訪ね、徹底して勉強させてもらいました。住まい手の切実な要望に応えた、思い出深い事例です」(田中社長・以下同)

相談に訪れたのは、事務所近くの築34年、77㎡のマンションで暮らす60代のご夫婦でした。

「角部屋で冬は寒く、とにかく暖かくて木に包まれた家にしてほしいと。あと、キッチンがすごく嫌いだから、何とかしてほしいと言っていました」

リノベーションする前のキッチンはクローズ型。前は壁、後ろに冷蔵庫があって狭苦しかったと言います。

そこで田中さんは、一度スケルトン状態にして断熱改修から着手。交換できない既存サッシには内窓を設置し、住環境を整えました。そして、LDKの床と天井には無垢材を張り、キッチンは視界の広がる対面式に。不満を一つずつ解消していきました。

LDKに入ると、長いカウンターがお出迎え

「ご夫婦ふたり暮らしなので、大きなダイニングテーブルは不要とのことでした。それならば、作った料理をすぐに出せて、ふたり並んで食事を楽しめる一体型のカウンターを提案しようと考えたんです」

カウンターの長さはなんと3.3m。奥行きも50㎝確保されているため、読書やPC作業などのワークスペースとしても重宝します。

キッチンの背面にはカップボードとパントリーを完備

キッチン本体には、ステンレス天板のキッチン・キットI型(W2400mm×D720mm)を採用。リビング側には床に張った吉野杉とも相性のいい米トガを張っています。

背面のカップボードの壁はアクセントウォールに。その後ろには、趣味で集めた観葉植物を置くスペース兼パントリーがあります。

キッチン側の扉材にはシナランバーを張った

キッチン側の床は水に強いタイルを選び、シンク下はゴミ箱を置けるオープン仕様に。冷蔵庫はリビングから死角になる位置に配置しました。

冷蔵庫の奥には洗面所があります。玄関・リビング側からもアクセスできる場所に設けることで、暮らしやすい回遊動線を実現しました。

カップボードもキッチン・キットを採用

キッチンの背面には、同じくキッチン・キットのカップボード(W1840mm×D450mm)を採用。キッチンの扉材を揃えることで空間に一体感が生まれました。

このほか、玄関土間は表情豊かな洗い出し仕上げに。一枚板のベンチや、立ち上がりを支える手掛け柱など、随所に「終の棲家」としての細やかな配慮が行き届いた、マンションリノベーションを実現しました。

事例2.子どもたちを見守り、美しく経年変化していくキッチン

LDK全体を見渡し、外の景色も楽しめる開放的なキッチン

こちらは、幼い3人と夫婦が暮らす、延床面積28坪の平屋です。田中さんは、このキッチンで最も重視したのは「視線の抜け」でした。

キッチンのすぐ横には、子どもたちの遊び場となる畳コーナー

ペニンシュラ型のキッチンは、キッチン・キットI型(W2400×D900mm)を採用。 扉材には穏やかな木目で、歳月を重ね飴色へと変わっていくシナ合板を選びました。そして、ダイニング側には、学校のプリントやお便りを整理できる便利な収納を設けています。

すぐ横には、子どもたちの遊び場になる畳コーナーを配置。キッチンに立ちながら、いつも見守れる安心の距離感です。 小さなオモチャ類も畳下の引き出しに収まるので、リビングはいつも美しく整います。

キッチンに立つと外の緑も目に飛び込んでくる

シンクにはポケット付きの「Eシンク」を採用し、洗剤やスポンジをすっきり収納。キッチンに立つと、ダイニング、畳コーナー、そして窓の外に広がるウッドデッキの緑までが一望できます。

シンク下はオープン、背後にはカップボード!

シンク下はオープンにして、置き場所に悩むゴミ箱の収納場所に。背後にはキッチン・キットのカップボード(W1840mm×D450mm)を設置しました。

「キッチンに立っているとき、すぐ後ろに調理家電があったほうが使いやすいと考え、いつも提案しています。長さもあるので、収納もしっかり確保できます」

使い勝手はもちろん、ずっと家族を見守り、住まいとともに美しく育っていくキッチンです。

事例3.みんなで料理を楽しめる、Ⅱ型アイランドキッチン

リビング側から見た、家具のように美しいキッチン

こちらは家族4人と猫14匹が暮らすペット共生住宅。外壁には杉板を張り、木材防護保持剤のウッドロングエコを塗布。延床面積は42.3坪です。

最後にご紹介するのは、人を招くのが大好きなご家族のキッチン。窓の外には奥行きが3mあり、深い軒を持つウッドデッキが広がり、バーベキューを楽しむ機会も多いそうです。

キッチンは、左右どちらからでもアクセスでき、複数人での調理もスムーズな「Ⅱ型アイランド」を選択しました。

ウッドデッキへの動線もスムーズなレイアウト

アイランド部分はキッチン・キットⅡ型(シンク部/W1800mm×D720mm)、壁側には、同じくキッチン・キットⅡ型(コンロ部/W2550mm×D650mm)を採用しました。

「こちらのお宅のLDKはW3640mm。一般的な対面式のI型キッチンだと、通路が狭くなってしまいます。どうしようかと考えていた時に、ekrea PartsでⅡ型キッチンを見つけたんです。これだったら回れるし、家族で料理が楽しめるなと思いました」

LDKのテイストに揃えて造作したダイニングテーブル

LDKの床には吉野杉を張り、天井には繊細なスリット加工を施したヒノキの化粧パネルをあしらいました。 木の温もりに包まれたこの空間に合うよう、キッチンのリビング側には米トガを張り、蜜ろうワックスでしっとりと仕上げました。造作したブラックチェリーのダイニングテーブルとも美しく調和し、心安らぐ風景を描き出しています。

インテリアとして美しいのはもちろん、家族で調理を楽しめ、人を招いた際にも大いに活躍してくれるキッチンです。

 

取材が終わったあと、田中さんがなぜキッチン・キットを採用してくださっているのか、その理由を伺いました。

「既製品のシステムキッチンは、どうしても素材感が画一的になりがちです。私たちが大切にしている杉板などの自然素材に馴染むキッチンをつくりたい、というのが原点でした。大手メーカーの高級グレードに引けを取らないよう、使い勝手はもちろん、引き出しのレール(タンデムレール)などの細部まで妥協せず提案しています」

確かな設計力と性能への知識。そこに「キッチン・キット」による造作という新たな武器が加わり、KEN建築工房の家づくりはさらなる深化を続けています。

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