「設計の力で、住むほどに愛着が深まる〝道具のような家〟を建てる」(前編)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々23〉
「設計の力で、住むほどに愛着が深まる〝道具のような家〟を建てる」(前編)
㈱イシハラスタイル 代表取締役 石原 真さん 石原智葉さん

石原 真さんと智葉(ともよ)さん

今回ご紹介するのは、愛知県西尾市を拠点に活動し、地域でも評判の工務店、株式会社イシハラスタイルです。

代表の石原真さんと智葉さんは、夫婦でともに一級建築士。家族構成やライフスタイルが変わっても楽しく暮らせる家を提案し、多くの住まい手から支持されています。

キーワードは、「道具のような家」。おふたりが手がける、どんな暮らしも受け入れてくれる家の魅力、そして、その想いから生まれた、オリジナルの造作キッチン「タフなキッチン®」について、前編後編に分けてレポートします。

地理学専攻、サラリーマン、大工修業…様々な経験を経て工務店を創業

愛知三河・岐阜・三重のヒノキ材や杉材を構造材に使用

イシハラスタイルは、今年で創業から25年の工務店です。代表の石原真さんは、建築士としては、少し変わった経歴の持ち主。

「大学では地理学を専攻していました。卒業後は建築関係の会社に就職。その現場で出会った大工の親方に弟子入りし、3年間みっちり大工仕事を学んで、工務店として独立しました」(真さん)

大工の親方についたのは、まだ20代のとき。30までは好きなことをやろうと決めていた真さんには、会社を辞めるときも、迷いはなかったと言います。

そして、地理的な幅広い視点と、建築のスキルを身につけた真さんは、27歳で独立

「会社名に〝スタイル〟を入れるのには勇気がいりましたが、自分を曲げずに、自分が思ったことを、建築でやっていこうという、決意を込めて入れました」(真さん)

以来、累計で100棟。年6棟~7棟の住宅の設計施工を手がけています。

内と外が緩やかにつながる平屋の事例

妻の智葉さんは、真さんの設計業務を手伝いつつ、一級建築士の資格を取得。相談に来るクライアントには夫婦ふたりで対応しています。

「日常の生活が、そのまま家づくりに役立っていると実感しています。家事をするなかで〝ここがこうだったら、もっといいのに〟とか、〝自分たちの暮らしに合っているよね〟とか日常会話的に膨らんだ延長線にあると思っています」(智葉さん)

提案するのは、住むほどに愛着の湧く「道具のような家」

相談者がイメージしやすいよう、プラン提案時に製作した模型

おふたりは、「土地にマッチした、気持ちのいい箱」を作ることを、一番に考えていると言います。そのために心がけているのは「作り込みすぎないこと」と「余白」。

「家って、引き渡し時が100%ではありません。暮らし方は毎年変わっていきますよね。子どもを育てる、巣立つ、あるいは体調が変わるとか。それに合わせて、家も変わっていくべきものだと思うんです。だから作り込みすぎないことが大事」(真さん)

何気ない〝余白〟が暮らし方の幅を広げてくれる

「わが家にも、子どもが寝室に使っていた部屋で、老後は私たちの寝室になる予定の部屋があります。今は、クローゼットになっていて、洋服がしまいやすいよう、ハンガーを掛けられる棚を渡しています。いつか棚を外せば、寝室に戻せます。もし造り付けてしまっていたら、お金もかかって取るのがもったいないけど、常に今の暮らしに合わせられるんです」(智葉さん)

作り込みすぎず、余白があれば、その時々に応じて、さまざまな使い方ができる。家全体は自然素材で優しく包み込んでくれる箱であることは変わらず、中(部屋)は、自由に変えられる。これがおふたりが考える、「道具のような家」の答えでもあります。

ホームページにある「道具のような家を建てる26ステップ」

この愛着の湧く家を建てるために大事なことを、真さんは26のステップに分けて、ホームページにあげています。

「素直に自分の言葉で、自分の思っていることを書きました。ご相談に来られた方にもこのことをご説明しています」(真さん)

さっそく、この26のステップで建てた「道具のような家」をご紹介しましょう。

市街地でも自然を感じ、暮らし方が変わっても心地よく暮らせる家

庭側からみたところ(平屋部分がLDK)

最初にご紹介するのは、共働きのご夫婦が2人の幼い子どもと暮らす家です。仕事や育児に忙殺されるなか、街なかの暮らしを楽しみたいという要望に応え建てた家です。

延床面積は、32坪ほど(1階25.3坪、2階6.33坪)と、決して大きな家ではありません。しかし、豊かな時間を過ごすための居場所が、ちりばめられています。

写真左側の平屋部分がLDK。大きな掃き出し窓を開ければ、外の空間までLDKと一体に。室内にいても心地よく過ごせます。

そして、木製サッシの先には、軒に守られたモルタルテラスが。テーブルを運び出せば、木漏れ日の下で食事を楽しむこと可能です。

庭には、芝生をメインに、常緑樹や落葉樹がバランスよく植えられています。四季折々の景色を楽しめる庭で、バーベキューを楽しんだり、水遊びしたり…。比較的、家が密集している地域でも、庭という敷地の余白まで、暮らしを楽しむ「道具」になっている家です。

LDKはどんな暮らし方も受け入れてくれる大らかな空間

LDKは屋根表しのおおらかな空間。後編で詳しくご紹介する、タフなキッチン®(ekrea PartsのEシンクと陶製のシンクが標準仕様)をメインに、模様替えやレイアウト変更が簡単にできるよう、動かせる置き家具で統一しています。ですから、家族構成の変化や、そのときどきのライフスタイルにフィットする暮らしができます。

「道具として使うキッチンに、魅力を感じてくださっていました。この壁付けキッチンがスタンダードなタフなキッチン®のレイアウトです。キッチンに立つのが楽しいと思ってもらえて、いい景色に育っていってくれたらいいなと、勝手に思っています」(真さん)

庭の恵みを食卓に。健やかな暮らしの中心は土間のLDK

大屋根と経年美化していく杉板張りが印象的な外観

こちらは素焼き瓦を葺いた大屋根と板張りの外壁が、印象的な家です。庭の背の高いサルスベリは、家族の成長を見守り、日差しを適度に遮ってくれます。そしてこの庭には、毎日の食卓に並ぶ野菜を育てる畑や鶏舎もあります。

土に近い暮らしを楽しむ土間のLDK

庭に面したLDKは、モルタルの土間に。室内と外部の中間ともいえる場所で、靴でもOKです。調理途中でネギが必要になったら、そのまま庭の畑へ。施主が願っていた暮らしが実現しました。

仕切りは最小限に。これからどう変わっていくか楽しみな空間

LDKの隣には、一段上がったフローリングのリビングも。家族がどこにいても同じ目線で会話が弾む家です。

オリジナルのタフなキッチン®とタフな作業台

こちらのお宅にも、真さんと智葉さんが考案したタフなキッチン®が入っています。

「家族の健康を考え、自分で味噌を作ったり、鶏を飼ったりしたいという人に、システムキッチンは似合わないですよね。引き渡し後、何度かお伺いしていますが、いつ行っても〝キッチンがめちゃくちゃ育っているな〟と思います」(真さん)

真さんが家族と一緒に育っていくと言う「タフなキッチン®」は、今やイシハラスタイルの代名詞のような存在に。全国から問い合わせが入ってきていると言います。

後編では、このキッチンが生まれた経緯と魅力をレポートします。

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