夫婦それぞれの視点と造作で、居心地のよい自然素材の家を提案

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々18〉
「夫婦それぞれの視点と造作で、居心地のよい自然素材の家を提案」
福田建築設計室 一級建築士事務所 福田征央さん 福田瑠衣さん

福田征央さんと瑠衣さん(自邸にて)

今回ご紹介するのは、福岡市を拠点に活動する「福田建築設計室」の福田征央さんと瑠衣さんです。

夫婦ともに一級建築士という強みを生かし、家族一人ひとりに寄り添った住宅を設計するおふたり。自然素材を適材適所に使い、既製品を極力使わず造作することで、手触りがよく愛着が深まる住まいを提案しています。

おふたりが考える、心地よい家を実現するための大事なことをインタビュー。その想いがこもった自邸も詳しくご紹介します。

自然素材で家族それぞれの想いがかなう心地よい家を

平屋と2階建てを組み合わせた構成の自宅兼事務所

福田征央さんは大学院を卒業後、設計事務所で腕を磨き、2013年に「福田建築設計室」を設立。以来、自然素材の手触りや心地よさを大切にした住宅を提案してきました。

自宅の一角にある事務所

  

2018年からは、それまで別の設計事務所に在籍していた、妻の瑠衣さんも合流。空間デザイン心理士®プロの資格を取得した瑠衣さんが、相談者自身が気づいていない要望を引き出し、より満足度の高い家づくりに活用しています。

「以前の事務所で私は、おもに店舗や旅館、クリニックなどの設計を手掛けていました。そのなかで、いろんな人が使う建物の設計もいいけど、家族が暮らす住宅の設計が楽しいと感じ、夫と一緒に仕事をすることにしました。夫が設計のメインの部分を担当、私はご夫婦別々にお時間をいただき、共通の目的とは別にある、ご自身の想いを聞き出して夫に伝えています。思いを受け止めることで、ものの選び方も変わってきます」(瑠衣さん)

征央さんの仕事スペース

自宅の一角にある事務所を訪れた人は、打ち合わせのあと、福田さんの自宅を見学することで、家づくりの方向性や、大事なことが見えてくると言います。

事務所に置かれていた模型

「相談に来られてから2、3週間で模型を製作して、ファーストプランを提案しています。その後、細部を詰めていき、実施設計までは6か月。お引渡しまで1年というのが、標準的なスケジュールになります」(征央さん)

では、ふたりの設計の想いがこもった、自宅を見ていきましょう。

建築家の自邸で、自然素材に包まれる心地よさを体感

リビングとダイニングがある平屋部分を見たところ

福田さんの自邸は、庭を取り囲むように、2階建てと平屋を組み合わせ、L字型に配置されています。平屋部分(写真)には、リビングとダイニング、深い軒のあるウッドデッキがあります。

そして、2階建て部分の1階にはキッチンと水回り、事務所が、2階には主寝室と子ども部屋、ファミリークローゼットがある構成です。

玄関を入りLDKを見る

L字型といっても台形の敷地に合わせているので直角ではありません。キッチンのある2階建て部分とダイニング・リビングがある平屋部分は写真のような角度に。

「直角ではないゆえに生まれる広がり感、奥行き感があります。直角が好きな方には違和感があるようですが、こういうのもいいねという人も結構いらっしゃいます」(瑠衣さん)

LDKの床は屋久杉の無垢フローリング、壁は卵の殻を主成分としたエッグペイントの塗り壁に。無垢床の足触りのよさと経年変化が分かります。また、調湿・消臭効果のある天然由来の塗り壁の心地よさも体感できます。

「屋久杉といっても地杉なので、コストを抑えられるのが魅力。それに、屋久島の林業を活性化しようというストーリーがあるんです。少し油分が多いことで耐久性が高く、香りもよく経年変化を楽しめます」(征央さん)

そこかしこに木の温もりを感じながら過ごせる場所が

キッチンから、ダイニング、そして奥のリビングを見る

ダイニングとリビングの南側(写真右側)には、大きな開口が。これは造作した木製建具の窓です。

「木製窓のよいところは、幅や高さなどのサイズを自由に作れること。それに、木枠だと内と外の境界があまり気になりません。ですから、室内にいても外をより近く感じられます」(征央さん)

その先には、幅6m×奥行き1.1mのウッドデッキが。家族でバーベキューを楽しんだり、日曜大工をしたり…。軒が深いので、小雨でも快適に過ごせる場になっています。

そして、ダイニングの奥には畳敷きのリビングが。この場所は、ダイニングと引き戸で仕切れるので、客間としても使えます。

ダイニングの壁側に収納付きのベンチを造作

上の写真は、リビング側からキッチンを見たところ。ダイニングの壁側には、タモの集成材で窓の幅いっぱいに、収納にもなるベンチを造作しました。

「イスだと引くスペースが必要ですが、ベンチなら不要。ダイニングテーブルをぐっと壁に寄せることも出来るので、デッキ側のスペースを広くとれます」(征央さん)

2階にある室内干し兼用のスタディコーナー

2階の主寝室と子ども部屋の間には、家族みんなで使えるスタディコーナーが。至る所に家族の「居場所」がある家になりました。

空間に馴染んだ造作キッチンにはekrea Partsの商品が

玄関側からキッチンを見る。扉材はタモの突板

キッチンはI型の対面に。サイズはW2600mm×D650mm。ダイニングとの間を立ち上げ、手元が隠れるように。背面には、以前から持っていた食器棚を置きました。

「キッチンは、私が図面を描き、工務店経由で、家具の街・大川の建具屋さんが造作しました。いい職人さんがいることで、図面を描くことが手間と感じません。楽しいです」(征央さん)

コンロ脇にはekrea Partsのスライドストッカーを設置

コンロの壁側のスペースを利用して、幅150mmのスライドストッカーを設置。

「上段には、調理中に使う調味料類を収納。さっと取り出せて便利です。そして、下段にはストックの置き場所にしています」(瑠衣さん)

コンロ下はオープンにして鍋やフライパンの収納場所に

そしてコンロ下は、オープンにして、同じくekrea Partsのワイヤーシェルフを取り付けました。ここには、フライパンや鍋、寸胴などの調理器具を収納しています。

「調理中でもすぐに取り出せて便利です。扉を付けていたらいちいち開けて出すことになって面倒。ワンアクションでいかに出し入れできるかを考えて、このようにしました。ご覧になったお客さまにも好評です」(瑠衣さん)

手触りがよく、便利な造作が至る所に

家を見回すと、各所に造作による工夫が。(時計回りに)キッチンの取っ手には、ekrea Partsのシンプルな長取っ手を使用。コスト的にも抑えられるうえに、木の面材に馴染みます。

ダイニングとリビング間の引き戸にはウォールナットの手掛けを。階段の手すりも掴みやすいように削った無垢材を使用。トイレのドアには、アンティークガラスをはめた明り取り用の小窓を設けました。

木天板の洗面台は大工工事で造作

洗面台は、タモの集成材を使って大工工事で造作。木をふんだんに使用することで、どこにいても心地よさを感じる家になりました。

築50年のリノベーションでも快適に暮らすための様々な工夫が

濃い目に塗装したラワン合板で仕上げ、懐かしい雰囲気に

こちらは、築50年の平屋のリノベーション。元の家のよさを生かし、耐震補強と断熱性能をアップした事例です。

室内の仕上げにはラワン合板を使用。既存の柱と色味を合わせました。ダイニングに面した廊下の一部を壁で仕切り、1畳の小部屋に。勉強したり本を読んだり、おこもり感のあるくつろぎの場が生まれました。

フレックスシンクを採用した洗面所

このお宅は、夫婦と子ども3人の5人家族。毎朝使う洗面台にも細かな要望がありました。

「お子さん3人は、みな女の子。毎朝、身支度で水を使うことが多く、朝から髪の毛を洗うこともあるそうです。ですから、びしょびしょになってもお手入れがラクなこと、壁付けでシャワーが使えることを希望されていました」(瑠衣さん)

それ以外にも、3人の娘さんが身支度に使うものを一人ずつ収納できるケースを下に置きたいという要望も。

洗面所には明り取り用に室内窓を設置(左)。洗面台はハイバックに(右)

そこで、ekrea Parts「フレックスシンク」ハイバックタイプ(サイズはW1200mm)を採用。身支度用品を収納するケースを事前に決めてもらい、その高さに合わせ、オープンな棚を造作しました。

「壁付けの水栓は汚れにくいし、ボウルと一体の洗面カウンターは、ひと拭きできれいになると、喜んでくださっています」(瑠衣さん)



おふたりは新築でも、リノベーションでも造作することは大事なことだと言います。

「既製品だと、面材にツヤのあるものが多く、自然素材の空間と合いません。またキッチンや洗面の場合、そこまでは必要としない機能もあります。できるだけシンプルに作り、使ってもらいたいので、造作を提案することが多くなるんです」(征央さん)

お話を聞いていて、自然素材の手触り、空間に馴染む素材、シンプルで使いやすいことが、心地のよい家を建てるキーワードだということがよく分かりました。

そして、このことを実現するために、造作することがとても大事だということも。

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