設計士と職人がワンチームとなって、心地よい家を建て続ける工務店(前編)

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々17〉
「設計士と職人がワンチームとなって心地よい家を建て続ける工務店(前編)」
株式会社COMODO建築工房 代表 飯田 亮さん 取締役 石川弘樹さん

COMODO建築工房の代表・飯田 亮さん(左)と石川弘樹さん(右)

今回ご紹介するのは、栃木県で評判の工務店、COMODO建築工房です。代表の飯田さんは、20年前に設計事務所を設立。その後、デザインに強い工務店を打ち出していきたいと、COMODO建築工房を立ち上げました。そして、取締役の石川さんと設計と施工の垣根を超え、心地よい住まいを作り続けています。

それが実現できるのは、設計士と職人がフラットで、より近い関係にあるから。一棟一棟、細部まで図面を描き、造作の手間を惜しまず出来上がった家は、どれも魅力的。

キッチンや洗面には既製品は使わず、すべて造作するというCOMODOの家づくりの魅力を、前編と後編に分け、詳しくレポートします。

COMODOという言葉に込められた家づくりへの想い

元鉄工所だった建物の中に作った事務所

COMODO建築工房は宇都宮市の郊外にある工務店です。スマホの地図アプリを頼りに伺うと、無塗装で経年美化した杉板の壁にCOMODOのロゴ(一番上の写真)が。しかし、事務所らしきものは見当たりません。あるのは、人気のない鉄骨の大きな倉庫。

  

恐る恐る殺風景な倉庫の中をのぞくと、愛らしい切妻屋根の小屋(写真)が!この小屋が、COMODO建築工房の事務所だと分かり、驚かされました。

  

「ここは鉄工所だった建物です。建物の中に、秘密基地っぽい建物を作りたかったんです。7年前にこの物件を借りて、屋根も外壁もラワン合板の小屋を建てました。初めて来た人は皆驚きますが、中に入るとワクワクされます」(飯田さん)

事務所の内部。倉庫内にあるとは思えない心地よさ

飯田さんは2007年に住空間設計LIVES(その後、飯田亮建築設計室へ名称変更)を設立。5年後に、工務店としてCOMODO建築工房を立ち上げました。

それぞれの立場の違いから、時には衝突することもある設計事務所と工務店。その両方を作った理由を伺うと…。

「デザインが優れているとかいうよりも、〝人の居場所〟を作る仕事をしたいという思いが強かったんです。職人さんとか、ヒロ(石川さん)もそうですけど、みんなで作り上げていくということで、心地のよい空間を作っていきたいと。そこで、飯田という冠を外してCOMODO建築工房を立ち上げました」(飯田さん)

以前は、設計事務所が工務店をやっているというスタンスでやりたいと思った時期も。しかし、今は工務店としてのアイデンティティーを、もっと高めたいという思いが強いと言います。

社名のCOMODOはイタリア語で「心地よい」「快適な」という意味の言葉だそう。事務所にも、ずっとそこにいたくなるような心地よさが。設計だけでは実現できない、手触りのよさ、柔らかさを感じる空間です

COMODOの強みは設計と施工がワンチームであること

事務所内に置かれていた模型

COMODO建築工房のメインメンバーは、おもに設計を担当する飯田さんと石川さん、現場監督の鈴木覚さんの3人。さらに「チームCOMODO」ともいえる、長年一緒に仕事をしてきた職人さんたちと現場を回しています。

年間に建てられる棟数には6棟と制約がありますが、図面を読み取り、時には職人さんから「こうしたほうがいいんじゃないか」と言ってくれることも。心地よい家にするには、どうしたらいいか、完成まで同じ想いで一体となって進んでいきます。

キッチン図面だけでもかなりの枚数になる

「ウチはキッチンと洗面台はすべて造作です。ちゃんと図面を描きますが、建具屋さんがそれ以上のものに仕上げてくれます。家具が建築よりなので、〝ここの背板は要らないよね?〟とか、コストも考えて提案してくれることも。チームなので設備屋さん、電気屋さんとの連携も抜群で、取り合いの部分もきれいに納まります」(飯田さん)

こうした設計士と職人とのいい関係が構築されていることで、キッチンや洗面は造作することが当たり前に。心地よい家の〝根っこ〟のようなものになっているのです。

キッチンの造作ではekrea Partsのポケット付きEシンクを採用

COMODO建築工房の造作キッチン、造作洗面台には、ekrea Partsの商品も採用されています。キッチンではポケット付きEシンクが標準仕様に。さっそく採用事例をご紹介しましょう。

LDKの空間と馴染む木天板のキッチン

COMODO建築工房が建てる家は、キッチンを家の真ん中に配置するプランが多くみられます。そして、シンク側の天板には木を使用。こちらはその一例です。

朝食を作り、子どもたちを「いってらっしゃい」と送り出す、リビングやダイニングで遊んだり勉強したりしている様子を見守る、さまざまなシーンで司令塔のような役割を果たすキッチンです。 日光杉の床や柱、そして、レッドオークの幅はぎ材のキッチン天板とダイニングテーブルが、木の温かな空間を生み出しています。

「ここキッチンぽいね、ここ洗面ぽいね、ここテレビ台っぽいね…、というのは好きじゃないんです。造作することでどこを見てもその家の一部で、シームレスに繋がっていくことを心がけています」(飯田さん)

ダイニングテーブルも造作。アイランド部分とつなげ片持ちに

キッチンは、リビング収納があるアイランドと壁付けを組み合わせたⅡ型。アイランド部分にあるシンクにはekrea Partsのポケット付きEシンク(オーバータイプ)を採用。

「縁に水栓の穴がついているので、木天板でも安心して使えます。ポケットがあるので使いやすい。このシンクがウチの標準仕様になっています」(石川さん)

ちなみにこの家は、延床面積22.3坪の狭小住宅。COMODO建築工房が掲げる〝小さく住まい豊かに暮らす〟という家づくりのメッセージに納得です。

COMODO建築工房では、キッチンは木天板にしたいけれど不安という住まい手には、木天板にリノリウムを貼る仕上げを提案しています。こちらはその例。

小口を無垢材で処理すれば、異素材でも木の雰囲気にマッチ

壁側にコンロ、アイランド部分にシンクを設けたⅡ型キッチン。ランバーコアで作ったアイランド部分の天板には、写真のようにリノリウムを貼りました。

小口に厚さ5mmのナラ材を単板で貼っているので、横からは木天板のように見えます。

シンクには、オーバータイプのポケット付きEシンクを採用。リノリウムとオーパータイプのシンクの組み合わせで、水漏れやシミの不安も解消されました。

リノリウムを貼った天板がLDKのアクセントに

こちらはまた別の事例。リノリウムとステンレスシンクのコントラストが美しいキッチンに。

洗面台も造作することで、より快適な場所に

COMODO建築工房は洗面台もすべて造作します。その中からekrea Parts「フレックスシンク」を採用して作った4つの事例ご紹介しましょう。

ミラーキャビネットの下に開口を設け、手元が明るい洗面台に

洗面台の奥側にはティッシュの取り出し用の口がついた引き出しが。奥の脱衣所兼ランドリールームの天井には、ナラの集成材で作った丸棒の室内干し竿を取り付けています。

最近は水栓壁付けの造作洗面台が人気

洗面台の前の壁にお気に入りの柄のタイルを貼り、そこに水栓を付けるのが、最近の流行りだそう。

左の事例は、洗面の下台をオープンにして、ミラーキャビネットの上にハイサイドライトを設けました。右は、同じ壁付けの水栓の洗面台でも、扉を付けた例。ミラーキャビネットもどちらも造作。

ハイバックタイプの洗面台の例

今回初めてハイバックタイプを採用した造作洗面台。手前のティッシュの取り出し口のある引き出しの奥には、ドライヤーの収納スペースがあります。コンセントも仕込んであるので、取り出せばすぐに使えます。

COMODO建築工房の家づくりへの想いと、キッチンと洗面の造作事例をご紹介しました。

後半は、心地よく暮らす工夫が随所に散りばめられた、石川さんのお宅を訪ねます。お楽しみに。

後編に続く

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