社員大工の手刻みと造作で、愛着が増していく家を建てていきたい

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々12〉
「社員大工の手刻みと造作で、愛着が増していく家を建てていきたい」
株式会社橋本工務店 代表取締役 橋本 繁雄さん

完成見学会で伺った家の外観

今回訪れたのは、浜松市を拠点に活動している橋本工務店です。二代目で現社長の橋本繁雄さんは、手刻みと造作で差別化を図ることで、自社案件を獲得し、事業を拡大してきました。

木を刻み、造作することで、住まい手の心を掴み続ける橋本社長に、完成したばかりの住宅をご案内いただきました。

扉や家具も造作した自然素材に包まれた家

駐車場からのアプローチ。その先に木製引き戸の玄関がある

案内してくださった家は、夫婦と幼い2人の子どもために建てられた平屋。大きな自然石を積んだアプローチの先に、着色塗装した吉野杉で造作した引き戸の玄関が。新築でありながら、なぜか懐かしく感じる佇まいです。

LDKに入ると屋根表しの木の空間が広がる

玄関を入って、ガラスを嵌め込んだ木製引き戸を開けると、屋根表しの伸びやかな空間が広がります。

小気味よく並ぶ垂木や柱は、地元の天竜杉を使用しています。そして、床はナラの無垢フローリング、壁は珪藻土。まさに自然素材に包まれた家です。

ダイニング側からキッチンを見る。キッチンの奥はパントリー

間取りはキッチンを中心に、リビング・ダイニング、個室、水回りを配したプラン。キッチンにはリビングを経由せず、パントリー経由でも行ける家事動線も。

この家に住む家族が、ずっと心地よく快適に暮らしていく様子が浮かんできます。

キッチンにはI型のキッチン・キットとカップボードを採用

キッチンのリビング収納の扉にはナラの無垢材を使用

キッチンには、W2550mm×D900mmのI型キッチン・キットを採用。基本のフロアキャビネットにリビングベースセットをプラスしたペニンシュラタイプに。

「ウチでは、受注の取りやすいツールのひとつとして、ekrea Partsのキッチン・キットを標準仕様にしています。価格的にもお手頃で、施工がしやすく、お施主さんの満足度も高いので」

パントリー側から見たキッチン。扉の木目が美しい

そして、背後には同じくキッチン・キットのW2140mm×D650mmのカップボードを設置。オークの無垢材を張った扉には、住まい手の要望で、真鍮の取っ手やタオルハンガーをセレクト。まるで家具のような美しいキッチンになりました。

シンク下はオープンにして、ゴミ箱置き場に

リビング側もキッチン側も扉には、オーク材の無垢材を使用。目立ちがちな食洗機の扉にも、オークの突板を貼っています。見た目も手触りも良いキッチンに仕上がりました。

カップボードの天板にもオーク材を使用

背面のカップボードの天板には、厚さ20mmのオークの幅はぎ材を使用。奥行きが650mmあるのでゆったり。調理家電を置くだけでなく、作業スペースとしても使えます。

通路の幅は家事のしやすさを考えて提案

「キッチンは、仕上げ以外にもこだわっていることがあります。通路幅は900mmとるということ。食洗機を開けて、食器をしまう作業がラクになるので」

家の各所に大工の顔が浮かぶ造作が

LDKの一角には家族のスタディコーナーも

キッチン以外でも、大工の手による造作が。こちらはLDKの窓際に設けた家族のスタディコーナー。勉強したり、本を読んだり…家族4人が思い思いの時間を過ごせる場所ができました。

木工事で下台を造作した洗面台

こちらは洗面台。システム洗面台を採用しがちですが、造作したことで、周囲に馴染んでいます。

2年前にモデルハウスを兼ねた自宅を建設

モデルハウスのLDK

橋本工務店には社員大工が4名在籍。このメンバーで毎年、新築、リフォーム合わせて5棟から6棟手掛けています。

「相談に来られた方には、まず私たちを知ってもらうために、構造見学会や完成見学会に参加してもらいます。2年前には、本社の隣にモデルハウスを兼ねた自宅を建てました」

モデルハウスは、天竜杉の梁や柱、ナラの無垢フローリング、珪藻土の塗り壁…橋本工務店のこだわりが詰まった空間。

自然を身近に感じられるLDKの大開口

LDKの南側に設けた大開口窓を開け放てば、まるで外にいるような解放感を味わえます。

窓際のベンチに座ってお茶を飲んだり、ウッドデッキでくつろいだり…。自然と共生するパッシブデザインの家の、心地よさも体感できます。

「無垢の木の香りや手触りよさ、空間を見て、触って、体感してもらうことで、家づくりへの「思い」が共有でき、その後の打ち合わせがスムーズに進んでいきます」

企業理念は「手で描き、手で刻み、手で建てる」

墨付けや手刻みのために作った作業場

実は社長が東京から浜松に戻り、会社を継いだ当初は、ハウスメーカーや大手ビルダーの下請けばかりだったそう。

「私も3年、下請けを経験しました。外張断熱工法など、機能面の知識は吸収できたのですが、手残りはわずか。自分で直接仕事を取って行くためには、差別化してくかない。思い浮かんだのが手刻みした」

そこで、手刻みができる45坪の作業場を作りました。結果、社員大工の腕もみるみる上がっていったと言います。

「親が作った木工加工機のある作業場ありましたが、手刻みするための作業場を作ってよかったと思います。技術も受け継がれていきますし、建てる家の質も上がっていく」

手刻みと造作が選ばれる大きな武器に

見学会の家の窓辺に設けられたベンチ兼収納棚

手刻み、そして、造作にこだわりekrea Partsのキッチン・キットを標準仕様にした、取り組みは、住まい手が建ててよかったと感じている家を生み出し続けています。

最後に2つの事例をご紹介しましょう。

まず1件目。古民家のリフォーム事例です。断熱性能をアップし、新築と変わらない快適な住環境を実現しました。

キッチンは、キッチン・キットのI型ペニンシュラタイプに。背面にはパントリーを設け、フロストガラスを嵌め込んだ木製建具で目隠ししました。リビング側にも食器収納を造作。

もう1件、新築の事例を紹介。

ワイドな2700mmのペニンシュラキッチンを採用し、手元が隠れるよう、ダイニング側を立ち上げ、上部にカウンターを設け配膳台として使えるようにしました。

背後には、キッチンと同じ幅のカップボードと吊戸棚を造作。収納たっぷりのキッチンになりました。

キッチン・キットの仕上げ部分(扉とカップボードの天板)は、同じオーク材にしたことで、年を重ねるごとにいい風合いに変化していくキッチンです。

「細かい仕事をきちんとこなせるかどうかで、家の仕上がりは変わってきます」と言う橋本さんの言葉通り、造作により、隅々まで愛着が増してく住まい。これからも楽しみです。

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