新築もリノベも、高い性能と自然素材の心地よさを併せ持つ家を提案
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々9〉
「新築もリノベも、高い性能と自然素材の心地よさを併せ持つ家を提案」
株式会社 池田組/LOCAL LIFE STANDARD 専務取締役 池田雄一郎さん

今回は、新潟県長岡市を中心に活動する株式会社 池田組の、2つの施設に伺いました。
まずご紹介する「宝地町モデルハウス(長岡パッシブハウス)」は、今年3月にエコハウス・アワード2024 最優秀賞を受賞。新潟県初のパッシブハウス認定を取得した、注目のモデルハウスです。
そしてもう1つは、リノベーションの魅力を伝える、自然素材と造作家具に包まれたモデルルーム。
2つの施設を手掛けた専務取締役 兼 住宅事業部長の池田雄一郎さんに、家づくりへの思い、そして思い描くこれからの住まいを伺いました。
事業立ち上げのきっかけは、2つの大きな災害と人口減少問題

アプローチから見た「宝地町モデルハウス」の外観
池田組は大正4年創業の総合建築会社。その住宅部門が、専務の池田雄一郎さんが率いるLOCAL LIFE STANDARD(ローカルライフスタンダード)です。
創業家に生まれ、小さい頃から職人が身近にいる中で育ってきた池田さん。大人になったら、建築に関わる仕事に就きたいと、思うようになっていったと言います。
そして、大学では建築を学び池田組に入社。住宅事業に携わっていくなかで、2つの大きな災害を経験したことで、LOCAL LIFE STANDARDという事業にたどり着きました。

縁側や玄関には屋根を付け、この地域ならではの雪対策も
「1つ目は、社会人1年目に起きた中越大震災です。被害の大きかった地域での被災度調査に参加したことで、建築とはまず、人命を守るものでなければならないと、考えるようになりました。そして、2つ目は東日本大震災。直後に被災地を訪れ、自然の驚異に無力さを感じるとともに、エネルギーや持続可能な暮らしができる家を建てる必要性を、強く感じました」
さらに人口減少問題についても、様々な活動に参加するなかで、自然を受け入れ、その地域のよさを引き出すことが重要だと、考えるようになったと言います。
「そうした経験からこれからの住宅事業は、脱消費型のエコハウスに取り組んでいこうという結論に至りました。それにプラスして、地場材を取り入れながら、大工の手仕事、木の温もりが感じられる住まいを目指そうと、この事業を立ち上げました」
宝地町モデルハウスで「エコハウス・アワード2024 最優秀賞」を受賞

1年を通して快適な室温をキープ(左)。熱交換換気扇は玄関土間に(右)
ちょうどその頃、パッシブハウス・ジャパンの森みわさんの講演を聞き、自社設計でパッシブハウスを実現しようという目標ができました。
パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が開発した省エネ住宅の設計メソッド。断熱材や、高性能な窓、熱を逃さない換気システムを導入して、徹底的に熱を逃がさないよう工夫した住宅です。冷暖房負荷や1次エネルギー消費量、気密性などで厳しい基準が設けられています。
池田さんは、時間をかけて必要な断熱材の量とコストバランス、雪国ならではの気候対策など、様々な問題をクリア。出来上がったのが、「宝地町モデルハウス(長岡パッシブハウス)」です。
「窓の性能が上がり、うまく設計すれば断熱材の量を減らすことが可能に。やっとお客さんに提案できるところまできました」

受賞の盾と証明書(左)。光熱費のシミュレーション結果を説明する池田さん(右)
モデルハウスの規模は4間×4間の総2階建て。延床面積は30.5坪。4人家族を想定し、新潟県の戸建ての平均延床面積38坪(令和5年の調査)から、廊下などを省き、このサイズに。
「パッシブハウスにしたことで、64畳分のスペースの冷暖房を、6畳用のエアコン1台で実現できています」
このモデルハウスで、ドイツ発祥の高性能建築認定制度をクリア。新潟県初のパッシブハウス認定を取得(2024年6月20日)し、さらに今年3月には、「エコハウス・アワード2024 最優秀賞」を受賞しました。
地産材、自然素材と職人が手掛けた造作に包まれた室内

室内の仕上げを説明する池田さん
パッシブハウス実現という性能面以外にも、設計者である池田さんがこだわったことがあります。
「自然素材にこだわり、地元産の材を積極的に使っています。屋根には県産の安田瓦を葺き、外壁には同じく県産の杉板を大和張りに。また、室内では、長岡特産の小国和紙を随所に取り入れ、壁には自然由来のエッグウォールを使用しています」

写真はL字型のLDKを、要(かねめ)部分のダイニングから見たところです。室内は和モダンテイストに。
リビング部分は吹き抜けにして、畳の小上がりは上に居室を設け、こもれるような空間に。その奥の壁は、小国和紙を貼っています。ホッとするやさしい空間が生まれました。

上の写真のように随所に職人の手触りが感じられるのも、この空間の魅力。
LDKの入り口近くにあるアイランドキッチンのリビング収納(左)も、リビングの小上がりの下の収納(右)も、建具職人や大工の手仕事です。

吹き抜けに沿って階段を上がると、手摺りを支柱代わりにした造作のスタディコーナーが。スツールも大工の手によるものです。
キッチンや洗面にはekrea Partsの商品を採用して造作

LDKの入り口近くにあるキッチンは、アイランドにすることで、キッチンとリビングへの2つの動線ができました。
キッチン本体はekrea Parts「キッチン・キット」のW2550mm×D650mmのI型キッチンを採用して作ったもの。リビングに向かう通路側にも、一段高くしたD500mmのリビング収納を造作してつなげました。上部をカウンターとして使え、キッチンで作業する手元を隠す役割も。

写真はダイニング側から見たキッチン全景。シンクはEシンクポケット付に。下をオープンにしてゴミ箱置き場にしました。
背面のカップボードは、キッチン・キットのハッチベースのキャビネット2個と、家電ベースのキャビネット1個(いずれもW600×D650)をつなげ、集成材の天板に。

扉は、懇意にしている建具屋に依頼。まるで家具のような雰囲気に。

扉材はラワン合板を使用。手の当たる部分には、U字に窪んだ形状の堅木を貼っています。造作ならではの、丈夫で手触りのいい取っ手です。

日頃、キッチン・キットをよく採用する理由を伺うと…。
「木の温もりやLDKの雰囲気を大切にしている弊社にとって、キッチン・キットは建具と合わせてコーディネートできることにメリットを感じています。加えてカスタマイズできる部分が多いので、お客さんの要望もかなえやすいところもいいですね」
住まい手から多いのが「シンク下にゴミ箱を置きたい」という要望。しかし、システムキッチンの場合できないケースが多いのも事実。また、最近、人気の高い海外の大型食洗機を選べることも大きいと言います。
「このスペースに引き出しのカゴを入れたいんだけど…という要望があるときも、パーツが揃っているのも助かります(笑)」

洗面台はフレックスシンクのフラットタイプを採用し、下台は造作。扉材にはキッチンと同じく、ラワン合板を張りました。

下台は造作。椅子やゴミ箱が入るようボウル下の部分はオープンに。
また、左右の脱衣所兼ランドリールームとトイレを仕切る引き戸の材を統一。普段は両側の引き戸を開けて、開放的に見せていますが、閉めれば落ち着いた木の空間に。これも造作したオリジナルの洗面台ならではです。
住宅性能の素晴らしさと、手触りのいい造作を体感した後、池田さんにこれからの家づくりへの思いを聞きました。
「パッシブハウスを建てようとすると、通常の住宅に比べ建築費が高くなります。それでなくても建築費は高騰しています。しかし、このモデルハウスを標準化すれば、省エネ計算や構造、断熱の部分の手間は大幅にカットでき、その分、費用を抑えられるんじゃないかと考えています。腕のいい自社大工もいるので、造作の部分はちゃんと丁寧に対応していきたいですね」
古いビルをリノベして作った「リノベーション」のショールームも話題

モデルハウスとは別に、新たな取り組みに挑戦していると聞き、KAKIGAWA LIVING PARKに作ったというリノベーションのショールームにも伺いました。
こちらは、池田組の不動産部門「かきがわ不動産」が、街の中心に近い倉庫の入った古いビルの1階と2階を、リノベーションした話題のスポット。おしゃれな飲食店やヘアサロン、ピラティススタジオが入る一角に、かきがわ不動産が運営する、ショールームがありました。

ショールームがあるのは2階。中央の共用部分は、イベント会場としても使われている場所で、わざわ座の屋台がずらり。そのすぐ横にあるショールームのドアを開けると、自然素材をふんだんに使った、マンションのLDKをイメージして作った空間が。

「駅の周りにマンションが増え、最近は、中古マンションを買ってリノベーションしたいというニーズが増えています。物件探しから設計、施工までワンストップで対応できる強みを生かし、この場所を作りました。マンションのフルリノベだけでなく、戸建ての断熱性能向上リノベや耐震補強リノベも行います」

新建材が使われた古い空間を木の温もりのある空間にするのは、池田組の得意とするところ。
リノベーションの分野でも、キッチン・キットでつくった造作キッチンや、わざわ座「大工の手」によるダイニングテーブル(写真中央)を提案し、採用されることも少なくないそうです。
新築だけでなくリノベでも、池田さんの「ココロ・カラダ・ミライを育む」家づくりの挑戦は続きます。

池田組/ LOCAL LIFE STANDARD(ろーかるらいふすたんだーど)
「ココロ・カラダ・ミライを育む」をコンセプトに、家族の健康を守る高断熱な住まいを提案。基本、自社設計で年間10~15棟を手掛ける。施工範囲は、車で1時間。それより遠い地域は相談を。
〒940-0094 新潟県長岡市中島3-8-10
℡:0258-89-6995
HP: https://local-life-standard.com/
●KAKIGAWA LIVING PARK
〒940-0094 新潟県長岡市中島4丁目12−5
HP: https://www.kakigawa.com/kakigawa-living-park/