難しい敷地でも設計力と造作で、快適で住み心地のよい家を提案する建築家

〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々 8〉
「難しい敷地でも設計と造作の力で、快適で心地のよい家を提案する建築家」
アトリエ スピノザ 井東 力さん、市原香代子さん

今回は、建築家の井東力さんと市原香代子さんが主宰する設計事務所・アトリエ スピノザの新たな住宅が完成したと聞き、取材に伺いました。

周囲を住宅に囲まれた旗竿敷地に立つ住宅の内部には、厳しい敷地条件を感じさせない、明るく伸びやかな空間が広がっていました。そしてLDKには、ekrea Parts「キッチン・キット」を採用した美しいキッチンが。

視線が抜け、空間の繋がる心地よい住宅を作り続ける、アトリエ スピノザの設計の秘密と、造作への思いを伺いました。

周囲を囲まれた旗竿敷地で、広がりのある開放的な家を実現

今回伺った「東矢口の家」

今回伺ったお宅は、夫婦と小学校に通う3人のお子さんが暮らすための住宅です。

設計にあたり、住まい手からは3つの要望がありました。それは以下の3つです。

1.家族みんなの趣味である、楽器演奏ができる音楽室が欲しい

2.奥さんはテレワークが中心の仕事なので、集中できる書斎が欲しい

3.成長していずれは巣立つ、子どもたちとの時間を楽しめる家にしたい

これらの要望をかなえるべく設計がスタートしました。

玄関から1階個室を見る(左)、階段脇には帰宅後スムーズに手洗いできるミニ洗面台を造作(右)

建築予定の場所は、道路に面した実家の奥にある、もとは借家が建っていたという旗竿状の変形敷地。さらに奥には、窓やベランダが並ぶ住宅が迫っている、決して良好とは言えない周辺環境でした。

しかし、完成した家の玄関を入り階段を上がると、マイナスの条件を見事に解消していることに驚かされます。

キッチン側から見た2階のダイニングとリビング

井東さんと市原さんは、2階にリビングを設けることで、開放的なLDKを実現。北側に迫っている隣家の窓やベランダの洗濯物が見えてしまうところは、窓は設けず壁でシャットアウト。代わりに天窓を設けたことで、十分な明るさを確保できています。

「バルコニーのある南側の窓は高さを抑えつつ、北側に天窓を設け、安定した光が降り注ぐようにしました。施主は、家族そろってリビングで演奏するのを楽しみにしています。2階リビングにしたことで天井高もとれたので、音が広がり、気持ちよく演奏ができると思います」(井東さん)

「夜もいいんですよ。壁際に設けた間接照明で、よい雰囲気になりますし、ライトアップされた中庭の木もきれいです」(市原さん)

リビング横のワークスペースカウンター

リビングには、家族が自然と集まる工夫も。リビング横に設けたワークスペースカウンターは、奥行きが60cmあり、ノートや教科書を広げても余裕。前面の壁には伝言や予定を書き込めるようホワイトボードを張りました。

きっと子どもたちは、部屋にこもらずこの場所で勉強し、親子が触れ合う時間が増えるはずです。

1つ目の要望、音楽室は書斎にも客間にもなるマルチルームに

音楽室の奥にはご主人の書斎も!

いちばんの要望だった音楽室は、LDKの横に、畳の小上がりのある個室をつくることで実現しました。

「造作した壁面収納には、愛用のバイオリン用。小上がりと同じレベルの最下段は、奥さまのチェロの収納スペースです。家族それぞれ楽器を取り出し、小上がりに腰かけ練習ができます」(井東さん)

この音楽室ができたことで、家族そろって楽器演奏を楽しむ時間が増えることでしょう。

ちなみに小上がりの下の部分は、来客用の布団を収納するスペース。ですから、来客が泊まる部屋としても使えます。また、奥には天井を下げて、おこもり感のあるご主人の書斎も!

音楽室、来客時の宿泊スペース、夫の書斎…、マルチに活用できる魅力的なスペースが誕生しました。

バルコニーはLDKと音楽室の共有スペース!

L字型のバルコニーを設けたことで、音楽室とLDKは内部からも外からもアクセス可能。

2つ目の要望、奥さんの書斎は、LDKを見渡すこともできるロフトに

キッチンの上部にロフトを設け書斎をプラン

2つ目の要望、奥さんのテレワーク用の書斎は、キッチンの上部にロフトを設け実現しました。

ロフトの書斎全景

LDKからは程よく仕切られた場所。キッチン側に設けた天窓からの光が差し込み、快適にテレワークができます。

また、リモート会議のときは、木製の引き戸を閉めれば落ち着いた空間に。

ロフトから見たリビングダイニング

ダイニング側の窓からは、ワークスペースカウンターで勉強している子どもたちの様子が分かります。

アトリエ スピノザが得意としている、「視線の抜け」と「空間の繋がり」が感じられる書斎です。

家の中心であるキッチンにはキッチン・キットを採用

キッチン全景

キッチンにはekreaPartsのキッチン・キットのI型W2700mm×D900mmを採用。ダイニング側には、コップや小さな食器類が収納できるリビング収納を設けました。

そして扉材は、天井や床と同じ樹種のオークの突板で造作。

キッチンの通路幅もゆったり

キッチンのシンク下はオープンにして、スツールやゴミ箱を置けるスペースに。

背面には同じくキッチン・キットのW1690mm×D650mmのカップボードと、W1690mm×D450mmの吊戸棚を設置。扉材を合わせることで、LDKの空間によく馴染んでいます。

オーク材の木目と厚みのあるサイドパネルで家具のような雰囲気に

「キッチン・キットのいい点は、空間に合わせて面材を自由に選んで作れることと、好きな設備を入れられること。予算の都合で価格は下げないといけないけれど、設備にはこだわりたいというお客さんには、とても評判がいいんです」(市原さん)。

フル造作を諦めてシステムキッチンを選ぼうとしても、限られた選択肢の中で選ばなければなりませんし、空間に合わせにくい。それにお手頃なシリーズだと、食洗機はA社のものしか入らないとか、水栓金具は決められた中からしか選べないという問題が起こるそう。

「こちらのお客様は、食洗機はBOSCH(ボッシュ)を希望されていました。好きなコンロや水栓も選べて、とても満足されていました」(市原さん)

上の写真のように、オークの突板を張り、サイドパネルを幅40mmと厚くすることで、重厚感も。インテリアとしても美しいキッチンになりました。

吊戸棚には作業台を照らすダウンライトが!

さらに、吊戸棚の下部にオプションでekrea PartsのLEDのダウンライトを埋め込みました。これで手元が暗くなりがちな作業台が明るくなり、気持ちよく作業できます。

設計者として、空間に馴染むキッチンを実現でき、設備面でもお客様の要望をかなえられてよかったとおっしゃるおふたり。

住まい手もアトリエ スピノザの設計で、欲しかった音楽室や書斎も手に入れ、末永く快適に過ごされることでしょう。

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