キッチン・キットの魅力はコストを抑えられ、イメージ通りの空間をつくれること
〈シリーズ_造作で住まい手の暮らしをかなえる人々②〉
「キッチン・キットの魅力は価格と実現したい空間をつくれること」
(合)藤原酒谷設計事務所 代表 藤原 真名美さん

自宅のキッチンを背に息子さんと一緒に
今回は「藤原酒谷設計事務所」を共同主宰している、藤原真名美さん、酒谷粋将さんご夫妻のご自宅にお邪魔しました。
新築や店舗設計はもちろん、マンションリノベを数多く手がけているおふたり。築25年、延床面積67㎡の中古マンションを購入しフルリノベーションしたご自宅は、RENOVATION OF THE YEAR 2024 特別賞を受賞し、話題となりました。
キッチンには、ekrea Partsのキッチン・キットを採用。イメージ通りに仕上がりになったと、満足されています。採用してよかったと思うこと、メリットに感じていることを詳しく伺いました。
延床面積67㎡とは思えない、広がりのある土間の一室空間

玄関を入ると土間のような空間が広がる 撮影:Akira Nakamura
藤原さんは夫婦と子ども1人の3人家族。延床面積67㎡、3LDKの典型的なファミリータイプの中古マンションを購入。自分たちの暮らしに合ったプランにしたいと、フルリノベーションしました。
「マンションでも植物に囲まれ、外の自然を感じる暮らしがしたいと思っていました。そこで、奥まで日の光が届くよう、既存の壁を取り払い、回遊できる一室空間にしました」

床に使われているタイル 撮影:Akira Nakamura
室内は、土や石を連想させるタイルが貼られた「土間」のような空間。ベランダから差し込む光が、奥の床まで届き植物たちもうれしそう。まるで外でくつろいでいるような気分になります。

玄関とLDKの間には扉が一切ない 撮影:Akira Nakamura
上は、ベランダ側から玄関方向を見た写真です。扉はなく、廊下を広げたようなスペースを介してつながっています。
「玄関とLDKの間の通路を広げて、何でもできる場所にしました。あとから付け足せば、仕事場にも遊び場にもなるように…」
ちなみに写真中央の白い壁の左側を通り抜けると、寝室を経由して、こちらも玄関とつながっています。

サナギから成虫になったばかりのカブトムシを観察中
「何でもできる場所」は現在、机が置かれワークスペースに。一方の壁際は植物やカブトムシの飼育ケースが置かれています。
壁付のキッチンはekrea Partsのキッチン・キットをつなげて造作

リビング側から見たキッチンの全景 撮影:Akira Nakamura
キッチンにはekrea Parts のキッチン・キットを採用。幅W2400mm×奥行D650mmのI型キッチンと、幅W1540mm×奥行D650mmのカップボードを横並びにした壁付のプランです。
「できるだけリビングやダイニングを広く使えるよう壁付にして、動線の一部に組み込みました。キッチンには夫婦ふたりで立つことが多いので、作業もしやすいです」

吊戸棚は通路とLDKをつなぐ要素にもなっている
吊戸棚は、ラワンランパーで造作。木口に3mm厚の挽き板を貼り、DIYでクリア塗装したもの。
あえて背板は付けず、はがしたままのRCの壁に留め付けし、扉もなしに。モルタルの下地が見えることで空間に馴染んでいます。

キッチンの扉材にはラワン合板を使用
キッチンの扉材には、ラワン合板を使用。DIYでワトコオイルを塗り自然な風合いに。取っ手やタオルハンガーには、真鍮製のものを合わせました。
「我が家で使っているダイニングテーブルは、ブラックチェリー。ラワン合板は大工さんが加工できるうえに、ブラックチェリーのような、濃い色の樹種を使った家具との相性がいいんです。逆に明るめの家具や床の家では、色が薄くさわやかな印象になるシナ合板を使っています」
キッチン・キットの魅力はコストを抑えつつ思い通りにできること

目に入らない窓際に炊飯器置く棚とロボット掃除機の基地をプラン
藤原さんは、キッチン・キットを使って造作するメリットとして、イメージ通りの空間を作れることと、コストを抑えられることを挙げてくれました。
「このサイズで、フル造作したら300万円以上かかります。しかし、我が家のキッチンは、箱と面材を合わせても100万円以下でできました」
今回、ほかにもよかったことがあったと言います。
「このマンションは、リフォーム会社が入った物件でした。そのキッチンで使われていた、食洗機やコンロを入れることができたんです。再利用できて有難かった(笑)」

シンクはEシンクのポケット付きに
「実はすごくこだわったことがあります。それは継ぎ目のないステンレスシンク。それもキッチン・キットとEシンクを採用することでかないました。ポケット付きにしたので、洗剤の納まる場所があっていいですね」
ただ、今回は初めての採用ということで、後悔していることも。
「オプションでステンレス天板を1枚にできること、キャビネットをチャコールグレーに変更できることは知りませんでした。現在進行中の2つの現場では、検討しようと思っています」
その2つの現場はいずれも一戸建ての新築で、キッチンとカップボードをつなげたプランだそう。今から完成するのが楽しみです。

藤原酒谷設計事務所(ふじわらさかたにせっけいじむしょ)
藤原真名美さんと夫で京都大学大学院准教授の酒谷粋将さんが共同主宰する一級建築事務所。店舗、駅舎のデザイン、一戸建て、マンションのリノベーションなど幅広く活躍。
〒236-0042 神奈川県横浜市金沢区釜利谷東1-24-8 ルンビニー つながりの庭
TEL:045-353-3532
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